akane
2018/12/07
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2018/12/07
『人間狩り』KADOKAWA
犬塚理人/著
物語の発端は、20年前に起きた女児殺害事件の犯行映像が闇サイトのオークションに出品されたことだった。件(くだん)のDVDは、警察内部から流出した可能性が高いことがわかり、警察内の不祥事や不正行為を挙げる役割を担う監察係の白石は、関係者への捜査を開始する。しかし空振り続きでなかなか犯人にたどり着けない。
一方、カード会社で督促の仕事をする江梨子は、あるきっかけから、不道徳な面々をネットで炎上させて懲(こ)らしめる〈自警団〉サイトの活動にのめり込む。そこで親しくなったサイト管理人の弥生と、有名投稿者の少年〈龍馬〉とともに、江梨子は女児殺害事件の犯人=元少年Aを追い詰めようと決意。ほどなく、少年法に守られ、名前を変えて社会復帰していた当時14歳だった犯人の素性を突き止める。
パラレルで走る二つの犯人探し、すなわち追い詰める側の正義感が、思いがけない形でつながるところまではスリリングなのに、読後もやもやしたものが残る。だが、そこが本書のキモ。
正義は怖い。時代や社会が変われば、その軸はいとも簡単にズレるし、その御名(みな)の下には非道な行為も起こるからだ。罪と罰のアンバランスに憤る正義感は誰しもが持つものだが、それを「ネットに晒(さら)す」というリンチのような形で糾弾することは許されるのか。現代ではSNSが、正義を問うときの大きな装置となっているがゆえに、発言ひとつ、行為ひとつで社会的に抹殺する/されるリスクが常にある。そんな現代社会を転写した舞台を用意し、正義の本質や義憤の危うさを問いかける。
著者は、本作で横溝正史ミステリ大賞の優秀賞を受賞。新人離れしたリーダビリティーを持つ期待の星の誕生だ。
『などらきの首』KADOKAWA
澤村伊智/著
デビュー作『ぼぎわんが、来る』が映画化されたタイミングで出版された、スピンオフ的な短編集。しかし、収録された6編は仕掛けも後味もバラエティーに富んでいて、オカルトライターの野崎や霊能者の比嘉真琴、琴子姉妹をより知ることのできるファンゴコロに寄り添った出来映えだ。
表題作は、“野崎はじめての事件”的な一編。〈などらきさん〉という化け物伝説が残る土地で起きた民俗伝承の謎のみならず、その先のひねりも見事。比嘉姉妹が挑む、何度も自殺する幽霊の因果律の物語「学校は死の匂い」ほか澤村ワールドは健在だ。
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