ryomiyagi
2021/02/08
ryomiyagi
2021/02/08
今の世の中では、社会を動かすために会社という存在が欠かせません。たくさんの人間が働いて、いろんなモノやサービスを提供するからこそ、私たちの生活が成り立っています。
では、この「会社」とはいったい誰のものなのでしょうか。
会計的に言えば、答えは極めてシンプル。「株主のもの」ということになります。
前回ご説明したバランスシートを見れば、その理由がよくわかります。
会社であれば、資本とは株主資本のことです。企業を立ち上げる際に、株主が出した資本金や利益剰余金などが含まれます。株を買うというのは、株主としての権利、つまり会社を所有する権利を(出資分に応じて)買うということでもあります。
負債というのは、銀行など他から借りてきた借金ですね。
会社というのは、株主資本と負債を合わせたお金を、商品や機械設備や土地、証券などさまざまな資産に変え、その活動によって利益を生み出すための仕組みなのです。
事業活動によって生まれた利益は、利益剰余金として資本に組み込まれ、さらなる生産のための投資に使われたり、株主への配当、借金の返済に使われることになります。
会社という仕組みの運用を株主から任されているのが、経営者です。どういうふうに資産を使って利益を上げるか。その舵取りを担っていますが、株主が経営者を兼ねている、オーナー経営者の場合もあります。
バランスシートの資産の部には、流動資産として現金、預金、受取手形、売掛金、商品、固定資産には建物、機械装置、土地、借地権などが含まれています。
不思議に思われるかもしれませんが、従業員という言葉はバランスシートのどこを探しても出てきません。ちなみに、従業員と社員は同じ意味で使われることが一般的ですが、会社法において社員とは株主のことを指します。法的に「社」の一員であるのは、株主なんですね。
経営を任された社長などの経営陣は取締役です(取締役と会計参与、監査なども含めて役員)。役員が会社運営の意思決定を行い、従業員に働いてもらうのです。
会社を所有している株主からすれば、従業員とは外様にすぎません。賃金という費用を支払って労働してもらっている、「会社の外にいる人」なのです。
株主、経営者、従業員のうち、会社として取り替えが利かないのは株主です。株主の決定によって経営者は入れ替わりますし、従業員を雇うのかどうかを決めるのは経営者ですから。
ニュースなどで「会社は、積み上がった内部留保を従業員に分配しろ」という意見を聞いたことがある人もいるでしょう。会社が得た利益から役員報酬や株主への配当を支払ったあとに残ったのが利益剰余金であり、そうして積み上がったお金が内部留保と呼ばれます。会社が溜め込んだお金なのだから、「従業員にもよこせ!」と言いたくなる気持ちはわかりますが、バランスシートを見れば、その意見には無理があります。
なぜかと言えば、俗に内部留保と言われる利益剰余金は、株主のものだから。内部留保が積み上がっているのだから、株主に対してそれを吐き出せというのであれば、法的にも正しい。しかし、会社の経営者に対して、株主の持ち物である利益剰余金を外様の労働者に配れと命じることは法的にもできません。
会社という仕組みを所有しているのは株主であり、その仕組みが生み出す富を得る権利を持っているのも株主です。従業員は会社という仕組みを動かすお手伝いをしてお駄賃をもらえるだけで、分け前はもらえません。法律の観点からすれば、従業員は、什器と同じ「消耗品」です。
では、株主ではない労働者はお駄賃をもらうだけなのか。簡単な話で、自分も株主になればいいのです。どこかの会社の株を1つでも買えばそれで株主になれますし、会社によっては持ち株会があるところもある。
株主になるといろんなメリットがありますが、一番大きいのは「不労所得」を真面目に考えるようになることでしょう。
ただし株主になるのがよいと言っても、手元にある資金が数十万円程度なら、無理に株式投資を始める必要はありません。
先に述べたように、その段階でまず投資すべきは「自分」。本を読んだり、興味・関心のあることを学ぶなりして、自分の価値を高めるのが先決です。
日本の会社では、長時間労働を始め、ブラックな働き方が横行しています。
上司から残業を命じられると、仕方なく受ける。上司や同僚が帰らないのに、自分だけ帰るのはまずいと思ってずっと会社にいたりする。
従業員が残業を断ったことで、会社から不当な扱いを受けたのであれば、徹底的にごねる、居座る、仕事をしているフリをしてスクワットする。従業員として当然の権利を行使しているだけだと言い張ればいいんです。
みなさんが経営者を甘やかしてつけあがらせているんです。
会社をうまく運営して利益を出すのは経営者の仕事です。適切に人材を配置して、必要に応じてトレーニングしたり、どういう事業を行うかを考えるのも経営者の責任。
お駄賃しかもらえない労働者が、長時間労働をするなんてバカげている。給料を上げなくてはいけないと思っている時点で、あなたは負けている。
これはもうハッキリ言います。(続きは本書で)
小飼 弾(こがい・だん)
投資家、プログラマー、ブロガー。株式会社オン・ザ・エッヂ(後のライブドア、現在の株式会社データホテル)の取締役最高技術責任者(CTO)を務め、同社の上場に貢献。著書に『新書がベスト』(ベスト新書)、『弾言』『決弾』(共著、ともにアスペクト)、『小飼弾の「仕組み」進化論』(日本実業出版社)、『「中卒」でもわかる科学入門』『未来予測を嗤え!』<共著>(ともに角川oneテーマ21)、『働かざる者、飢えるべからず』(サンガ新書)、『本を遊ぶ』(朝日文庫)など。
ニコニコチャンネル「小飼弾の論弾」では、毎月2回、時事ニュース解説や科学・IT解説、書評などをライブ配信しています。無料部分は、YouTube Liveでもご覧いただけます。
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.