BW_machida
2020/12/04
BW_machida
2020/12/04
世界中を巻き込んでのコロナ騒ぎは、収まるどころか第一波、第二波を上回る第三波の到来を覚悟せねばならない事態となってきた。それでも開催すると、一部の政治家が息巻く東京オリンピックなど、今や信じているのはよほどの楽天家か関係者くらいではないだろうか。しかし本当に案じられるのは、それが及ぼす経済的なダメージにほか無い。そう、開催はするにせよしないにせよ、ダメージを及ぼすであろうことはほぼ確定なのだ。などと、極めて不安定な世界経済の先行きを考えれば、もはや個人レベルでの経済対策を講じずにはいられない。そんな今だからこそ読むべき一冊が『20年で元本300倍お金が集まる5つの原則』(光文社新書)だ。
前編では著者が提唱する5原則のうち、「お金はやりたい仕事で稼ぎなさい」「お金は楽しく使いなさい」「いまも将来も犠牲にせずお金を貯めなさい」の3原則を紹介した。
今回は、残る2つの原則を紹介したい。
原則4 将来のために投資を始めなさい
近年、自らをトレーダーと称する若い人たちが結構居るらしい。言うまでもなく、トレーダーとは投資家のことだが、私など、「投資」と聞くだけで他人ごとになってしまう。そして今や、そんな自分を恥ずかしくすら感じさせる世の中になって来た。
それほど、ある種の人たちには現実的な選択肢でもあるようだ。
とは言え「投資」という言葉には、やはり「失敗したらとんでもない損をする」という恐ろしさや、「太刀打ちできる知識がない」というイメージが拭い切れない。
本当の投資は怖くも難しくもない
投資は長期的には損をしない
と本書は、まるで読者の気持ちを察しているかのような力強い言葉から始まる。
最近では2020年2月に起きた株価の大幅な下落「コロナ・ショック」。「サブプライム・ショック」や「リーマン・ショック」も、強く印象に残っているかもしれない。あるいは、1990年に起きた「バブル崩壊」の話を聞いて、投資はギャンブルと同じで危険なものと教えられてきたかもしれない。
その通り。バブルこそ、その恩恵を受けるには若すぎたが、それによってどれほど大きな変化が起きたかは様々な形で見聞きしたし、「バブル崩壊」によって数え切れないほどの企業が倒産し、後になって聞いてみると多くの知人が自己破産していた。その後も、「サブプライム」や「リーマンショック」が激震を走らせ、「コロナショック」は現在進行である。
けれども、投資はまったく怖くない事実を知って欲しい。
株価が大暴落した印象は強く残るけれど、世界全体の視点で長期的に見たら、こうした大暴落は一時的な状態にすぎないのだ。株価は何度もあった大暴落を乗り越えて、ずっと上昇してきている。
確かにそうなのだろう。東京やニューヨークの大騒ぎする取引所のニュースをその都度目にするが、今も各地の取引所は活況を呈しているし取引は続いている。
著者の弁には、なんだか地球規模の気候変動の話を聞いているような感じがする。
地表のほとんどが氷に覆われた氷河期と温暖な間氷期を、何度も地球は繰り返してきた。それでも生物は進化を続けたし、人類もまたその中で暮らしを変化させつつ生きてきた…的な話とオーバーラップして、「なるほどそうか」と思わせる。
原則5 お金と楽しく向き合いなさい
お金を目的とすると人生はつまらなくなる
たくさんお金の話をしてきたけれど、そもそもお金とは何だろうか。あると安心するもの、ないと不安になるもの、生活を豊かにするもの。お金はさまざまな視点から語られているけれど、楽しい人生を歩んでいくうえで君に覚えておいてほしいのは、お金は目的を叶えるための大切なツール(手段)だということだ。
5番目となる最後の原則を語る、冒頭の一節がこれだ。
ある程度の見識を持っていれば、持たざる者ですら口にする「お金論」だが、著者に語られるとこれまで聞いたどれよりも胸に響く。
以前、セレクトショップで働く後輩からこんなことを聞いた。
「自分が若かったころのように、服選びが好きで通って来るコが少なくなりました……」
彼によれば、最近は好きなブランドの欲しい服はすでにネットで調べていて、さらにその服が置いてあるショップもチェック済みで、来店しても試着するだけ。サイズを確かめれば終了。店では試着だけして購入するのはネットなのだとか。かと思えば、他県ナンバーの高級外車で乗り付け、「ここからここまで全部」と一度に何十万円もの買い物を平然としていく「得体の知れない若いお金持ち」が結構な頻度で現れるらしい。
ファッションに興味のある後輩にとってみれば、セレクトショップこそ面白い洋服選びのできる場所で、新しい出会いを求めて時間の許す限り見て回りたいスポットのはずなのに、近頃では違ってきたと嘆いていた。
正直それほど洋服に興味のない私には、彼の嘆きの大半はうなづく程度の話なのだが、最後の「得体の知れない若い金持ち」には引っ掛かるものがあった。
その実態は知れない。単純に資産家のお坊ちゃまかもしれないし、仮想通貨の先駆けか、自称トレーダーか、はたまた近頃話題のユーチューバーだったのかもしれない。
会ったこともない彼らの素性を知ることこそ叶わないが、それでもわかるのは、持たざる者には決して手にすることの出来ない多くの選択肢を、「得体の知れない」彼らは手にしているという事実である。
投資を始めたきっかけはお金がたりなかったから
大学生のときに初めて生涯収支の計算をした僕は、圧倒的にお金が足りない不安に押しつぶされそうになっていた。
そうして著者は、働く以外でお金を稼ぐ手段としての投資を始める。
まずは為替から。そして為替が勝者と敗者の合計値がゼロとなる「ゼロサム」であることに気づき、企業が儲ければ企業も株主も儲かる(「プラスサム」)株式取引を選択する。
あとは御多分に漏れず儲かるときばかりではなかったようだが、米国の著名投資家であるピーター・リンチを知ることによって、彼が13年間でファンドの運用資産を700倍にしたという考え方や手法を真似るように投資を始める。
それからおよそ9年間で、元本を6倍とするなど順調に増やしていくのだが、2007年10月に起きるリーマンショックでは、みるみる株価は下落して、一時は資産の半分ほどが無くなってしまったらしい。それでも著者は、原則4で語っていたように、「株価は必ず回復する」と売却するのを我慢し見事回復に至る。
その後、表題の元本300倍に至る道筋は上記のような単純なものではないが、それは本書をひも解いていただく方が良いだろう。
少年の頃の著者が信じられず、しかし当時の日本人のほとんどが信じていた「よい人生=よい高校+よい大学+よい会社」に替わる解として、勝ち組となった著者が手にしたのは「よい人生=楽しい人生=やりたいこと×できること+必要なお金」という公式だった。
文/森健次
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