BW_machida
2020/11/27
BW_machida
2020/11/27
※本稿は、渡瀬裕哉『税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
ワタセユウヤ「政治家に圧力をかけてください!」
フォロワー「官邸にメールをしておきました!」
行動することは大事ですが、モノにはやり方というものがあります。
何かしなければ、と思う気持ちはわかりますが、官邸にメールしても無駄です。あの人たちは、官邸に送られてくるメールなど、ろくに読んでいません。
国政を担っているのは官邸ですから、官邸を動かせれば政治は変わります。しかし、そう簡単に動かせるところではありません。官邸は一般有権者のことなどゴミだと思っています。メールを送ったところで絶対に見ません。方法が間違っています。
ここは「急がば回れ」です。
では、税金を下げるためにはいったいどれくらいの人の賛成が必要なのでしょうか。
端的に言って、有権者の10%です。
2020年4月、コロナ対策として、安倍内閣が第一次補正予算を組みました。ところが、閣議決定までしたその予算に、公明党が「すべての国民に一律10万円の給付を」と異議を差し挟み、決定を覆しました。
この公明党の得票率が、10%程度です。それでも、閣議決定をひっくり返すパワーがある。これが10%の力です。
「公明党」では特別感がありすぎるので、もう少し抽象化しますと、
・選挙で10%の得票力がある(10%が、外側からも塊となって見える)。
・その塊が一生懸命に(選挙のときばかりでなく、年がら年中)声を上げる。
以上の条件が整えば、減税でも、どんな規制廃止でも、できます。
議決は多数決で行われるものですから、51%の議席を取らなければならないと勘違いしている人がいますが、そんなことはありません。
公明党が閣議で決まった第一次補正予算をぶっ潰して一律10万円の補正予算をねじこんだように、やろうと思えば消費税の5%程度の予算を、一瞬で右から左に移せる。ということは、そのぐらいいつでも減税できるということです。
確かに法案などを議決するためには過半数が必要なのですが、そもそも自民党が安定政権を保つためには公明党の協力が必要なのです。それで、得票率10%の公明党が政権内で拒否権を持っている。逆に言えば、10%でキングメーカーになれる!
日本全国には、(選挙権のない若年人口を除くと)約1億人の有権者がいます。投票率約50~60%とすると、10%とは500万~600万票強です。これだけ得票できれば、税金を下げられるのです。
「600万票」では大きく見えるかもしれませんが、小選挙区が約300ありますから、選挙区当たり2万人の勘定になります。ただし、僕が政治事務所の中で感じた感覚からすると、議員に無視できない勢力と認識させるには、選挙区当たり数千~1万人弱でも十分です。また、得票率10%は公明党をイメージした数字ですが、実際には7~8%程度でも、相当の威力を発揮します。これは共産党と同程度です。
実際に共産党が一方につくと政権維持や政権交代に大きな影響力を及ぼしています。大阪では自民党と共産党が共闘するという珍妙な事態になっていますが、そうでもしないと維新に勝てないと思うから、背に腹は替えられないのです。
一般的に小選挙区で当選するためには、約10万票が必要です。2万~3万人の塊があれば、それがどちらにつくかで各小選挙区における勝敗を左右することができます。なかには特定の党が圧倒的に強い選挙区もあるので、そういうところは難しいと思いますが、そんな区域でも、そのときどきの選挙の争点によっては、流れやトレンドを生み出す力として無視できないものとなるでしょう。
各小選挙区2万~3万人の勢力が全国で同じ方向に怒りを発散させたら、政権交代が起こります。この塊が「減税しろ」もしくは「増税反対」を叫ぶと、絶対に増税することはできなくなります。もし増税したら政権交代ですから。
ですから、半分以上取らないと負けと思わないことです。もちろん、議席が多いに越したことはありませんが、目標が高すぎると息切れしますし、税金を下げるためだけなら、そんな必要はない。五割どころか、その10分の1でOKです。
全国で、公明党レベルで500万~600万人強、共産党レベルで400万~500万人。この数字でピンとこない人も、N国ならわかりやすいでしょうか。彼らは何もないところから出発して、短期間のうちに約100万票集めました。僕たちが目指すのは、N国×5の勢力です。これで、増税がふせげます。
「政権を取ることなんて不可能だ」
それは(今のところ)確かにそうです。しかし、税金を下げるだけなら、5~10%でいいのです。
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