ryomiyagi
2020/11/19
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2020/11/19
※本稿は、渡瀬裕哉『税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
昭和四五年度(一九七〇年)から令和二年度(二〇二〇年)の五〇年で、日本の税金は約二倍、社会保障費用は三倍以上になりました。これは同時に、政府が国民個人が持つ私有財産を侵害する規模が二倍から三倍になったことを意味しています。
日本人は忍耐強い国民性を持っていますが、困ったことに、政府はそれにあぐらをかいて税金を上げ続けようとしています。日本人がこの状況を甘受しているのはなぜでしょうか。国別経済力ランキングが下がったとはいえ、経済大国の日本では餓死するようなことはまずありません。それゆえ、危機感が薄いのでしょうか。
でも、日本人の堪忍袋の緒が自然に切れるのを待っていては日本経済は沈没してしまいます。だから僕は積極的に「堪忍袋の緒を切れ」と声を大にして言いたいのです。
土木工事も社会保障も、ほとんどの日本人が当たり前のように国や地方自治体の事業だと思っていますが、本当に政府がやる必要性があるのか、そもそも、その事業が必要なのか、必要だとして、そのやり方は間違っていないか、よく考える必要性があります。
また、一般的に言われていることと実際とではかけ離れているケースが多々あります。役所がやることの大義名分は実態と本当にリンクしているのか?
例えば、社会保障費がかさむからと導入された消費税ですが、本当に社会保障(だけ)に使われるのでしょうか。
僕は以前、大学教授らとともに地方自治体の事業仕分けの仕事をしていました。自治体は予算の執行現場であり、そこで行われていることが政策の大半ですが、とにかく無駄な事業が多いのです。
自治体の仕事は国の事業と違って見れば誰でも分かるものですが、一例を挙げてみましょう。僕が携わっていた地方自治体では、住民の環境問題への意識を啓発するために「環境啓発のチラシを配る」という事業が行われていました。
この事業の効果について疑問に思い、「この取り組みは住民の意識に対して実際にどの程度の効果があるのですか?」と担当者に聞いたことがあります。すると、担当者は「チラシを印刷しているだけなのでわかりません」と答えたのです。
正直な回答をしてもらったことには好感が持てたのですが、住民の環境問題への意識がこの事業によってどれだけ高まったのか、極めて疑問です。僕が思うに、この事業にかかった経費と人件費はまったくの無駄。そして、こうした何の意味もない事業は、日本全国のあちこちで細かく行われているのです。
二〇二〇年の七月一日からスタートしたレジ袋有料化は、その最たる例です。
旗振り役の小泉進次郎環境大臣はレジ袋有料化に際して、テレビのインタビューに答えて、「政策的にはほとんど意味がないが、国民の意識を変えるためにやっている」とヌケヌケと述べていました。
レジ袋有料化とは増税の一種であり、その政策効果がほとんどないとは恐れ入りました。国民を教育するために罰則を科す、とは何様でしょうか。
一事が万事、このように無駄な浪費を繰り返すから税金が足りないように見えるのです。はっきり言わせてもらいますが、日本では税金は余っています。
ウソだと思う方がいらしたら、ご自身が住んでいる自治体名(〇〇市)と事務事業評価を調べてみてください(検索すればすぐ出てきます)。すると、役所の各仕事を一枚紙のペーパーに整理した一覧表(事務事業評価票)が出てきます。
その内容を見たら唖然とすることを保証します。官僚が民間を指導すべきだとする「大きな政府」を支持していた僕の友人も、一通り読み終えたら役所の現状に対して一八〇度考えが変わりました。
ちなみに、その一覧表すら公開されていない自治体の状況は推して知るべしということです。
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