デートの対価で奨学金を返済 #パパ活の社会学2
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女性が年上の男性とデートをして、見返りに金銭的な援助を受ける――そんな「パパ活」が若い世代を中心に広がりを見せています。実際の男女にインタビューを敢行し、パパ活を社会学の知見から分析した光文社新書『パパ活の社会学』(坂爪真吾著)が刊行になりました。刊行を記念して、『パパ活の社会学』の一部を全4回に分けて公開します。彼女ら彼らをパパ活に駆り立てるものとはいったい何なのでしょうか?

 

第1回はこちら

 

 

デートの対価は、1回につき4万~5万円

交際クラブ経由ではまだ男性に出会っていないという玲香さんだが、現在はキャバクラでバイトをしていた時に出会った40代後半の既婚男性と、週に1回デートをしている。

 

男性からもらう対価は、1回のデートにつき4万~5万円。

 

「彼とは、もう1年くらい一緒にいます。夜8時半過ぎに待ち合せて、二人でご飯に行って、飲みに行って、深夜の3時くらいまで過ごす。普通に仲がいいから、全然苦じゃない。彼は40代後半で、私とは20歳以上離れているのですが、会話は普通にかみ合います。夜の仕事をやっていたら、誰とでも話を合わせることができるようになるので。ちなみに身体の関係はないです」

 

1回につき4万~5万円のお金を費やして、食事してお酒を飲むだけ。その男性は、玲香さんに何を求めているのだろうか。

 

「最初は、確実に身体目当てだったのだと思います。深夜まで二人で飲んで酔っ払うと、『ホテルに泊まろうよ』とか言われますけど、私は『なんで?』と断ります。そうすると、大体次の日に彼の方から謝るんです。『昨日はごめん』って。真面目なのかそうじゃないのか、分からないですけど。無理な要求をしたら、関係を切られてしまうと分かっているのでしょう。私と会えなくなる方が嫌だから、手を出してこないのだと思います。彼は私にとって大切な人ですし、彼にとっても私は大切な人なんだと思います」

 

同世代を恋愛対象として見られなくなった

玲香さんは、そうした「パパ」となってくれる男性について、「人数を増やしたいとは思うけど、あんまり自分から動いて探す気はしない」という。

 

「大学でも、パパ活っぽいことをやっている女性は多分いると思いますが、みんな公には言わないですね」

 

パパ活を始める前と始めた後で、変わった点はあるだろうか。

 

「同世代を恋愛対象として見られなくなったことです。中学や高校の頃は全然大丈夫だったのですが、今は同世代の男子とは付き合わない。足りないんですよね……主にお金が(笑)。

 

パパ活していない友達の中には、『40代と付き合うとか、絶対無理』っていう女の子もいます。

 

でも年上の男性には、それまでに培った経験からくる大人の余裕がある。

 

そして、『こうしたら女の子が喜ぶ』と分かっている」19歳や20歳の大学生男子が、同世代の女子から「お金」やら「大人の余裕」やらを求められても辛いだろう。

 

同世代の男子が可哀そうにも思えてくる。

 

「経営者の人と会って話を聞くと、色々なことを教えてもらえます。普通、大学生が経営者に会う機会はほとんどないですよね。普通にバイトしているだけの子は、まず会わない。知らない世界で活躍している大人に出会う、それだけで人生は結構変わると思います」

 

玲香さんにとって「理想のパパ」とは、どんな男性だろうか?

 

「私にとっての理想のパパは、生活できるくらいのお金をくれて、色々な話ができて、色々なことを教えてくれる人。できればパパは一人に絞らずに、何人か欲しいです。色々な人と話して、知らない世界のことを知りたい。パパ活で出会った相手でも、素敵な人であれば、お金は要りません。でも、お金を介さない関係まで行ったことはないですね。結局、なんだかんだと理由をつけてもらってしまう。相手側が『払わせてくれ』ということもありますし。現在の彼氏も既婚者で、お子さんもいるため、深い関係は求めてこない。独身の未婚者やバツイチの男性は、相手がこっちに恋愛感情を抱くようになると面倒臭い。

 

なので、既婚男性の方がこっちも嬉しいです。変に深入りされないし、一番安全。ちなみに私自身は、結婚願望があります。私が自由に過ごせるくらい、お金を持っている人と結婚したいです(笑)。子どもに好きなことをさせるためには、お金が大切。私も稼ぐけど、それ以上に結婚相手には稼いでもらいたい」

 

「卒業までに奨学金と親の借金を返したい」

 

経済力を重視する玲香さんだが、自分がパパ活で稼いだお金は、どのように使っているのだろうか。

 

「貯金です。卒業までに奨学金と親の借金を返したいなと思って、それでキャバクラでメッチャ働いていたんですよ。

 

そしたら学校に全然行けなくなってしまって。友達に『奨学金は学校を卒業してから返すものなんだから、今はそんなに働いていないで、学校に来なよ』と言われました。でも不安じゃないですか。奨学金と言っても、結局借金なので。早く返したい。卒業までに300万円は貯めたいです。ちゃんとやればあと2年くらいで貯まりそうです」

 

パパ活で稼いだお金は、自己投資にも使いたいと玲香さんは意気込む。

 

「経験だけは奪われないので、旅行とかも行ける時は行くようにしています。勉強も含めて、自分のために使おうとメッチャ考えています。1000万円の貯金がある女は、それを目当てに男が寄ってくるけど、1000万円を自分に投資した女は、男から『身一つで来い』と言われる、という格言を聞いたことがあるのですが、その通りだなと思います。与えた分は返ってくると思うし。稼いだお金をホストにつぎ込む人もいますが、それは勿体ない。全部自分に使いたいです」

 

パパ活で稼げる人とそうでない人の差は「ヤル気」である、と玲香さんは語る。

 

「ただ私は……あまりヤル気はないな~~(笑)。キャバであればお店に行けばお客さんが来ますが、交際クラブでは登録しただけでは仕事は来ませんから。本気でパパ活している子は、クラブのカレンダー機能とかメッチャ活用していると思う。

 

きちんとスケジューリングして、『この日のこの時間帯は空いています』と男性会員に伝えて、オファーを集める。

 

デートの日に備えて体調を整えることも含めて、全て仕事と思ってやっている。風俗で働くよりも、絶対にパパ活した方が割がいいので、本気でやっている人はやっているんだと思いますが、私はそこまでやる時間と気力がないな……と。

 

パパになりたがる男性が求めているものは、『自分の立ち位置をバレないようにしながら、女の子とそういうことをしたい』ということ。あと、『ただそういうことをしている女の子に会ってみたい』という気持ちもあると思います。

 

Hなことをしたいだけなら出会い系サイトでいいはずなので、風俗嬢やキャバ嬢ではない一般の素人っぽい女の子と、何らかのつながりが欲しいのかなと思います。パパ活で稼ぎたいのであれば、男性側のそうした欲求に応えるような振る舞いができればいい。デート代も、厳密に1回何万とか決まっているわけではない。金額をきちんと決めてしまうとプロの業者っぽくなるので、男性側もカッチリと決めたくないのだと思います。私からも何も言わない。言わなくてもお互いに通じ合えるような、阿吽の呼吸ができる相手と出会えればいい」

 

第3回に続きます)

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パパ活の社会学

パパ活の社会学援助交際、愛人契約と何が違う?

坂爪真吾(さかつめしんご)

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