最強の栄養療法に出会った医師のきっかけは、妻の不調だった
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オーソモレキュラー療法とは、「身体の中の分子(栄養素)の濃度を最適な状態に保つことで、身体の機能を向上させ、病態の改善をする治療法」のことです。ビタミンやミネラルなどの栄養素を正しく取り入れることで、病気の予防や治療を行なうもので、欧米を中心に発展してきました。

 

「現代医療における栄養の視点の欠落」を問題視するオーソモレキュラーでは、体内の栄養バランスの乱れが多くの病気や不調の原因であると考え、個々人の検査データをもとに、薬やホルモンの補充ではなく、栄養となる物質の材料を食事やサプリメントで補充することを提案しています。

 

私はこれまで、うつ病と食事の関係、アレルギーとビタミンD、発達障害と隠れアレルギー、がんと栄養などについて、いち早く注目し、治療に取り入れ、こうしたテーマで本を執筆してきました。実は、これまでに執筆してきたどの本でも、読者の皆さんへお伝えしたかったことの根っこには、オーソモレキュラーの考え方があります。

 

ここで、オーソモレキュラー療法とは何かについて説明する前に、まず私の医師としての経歴と、オーソモレキュラーとの出会いなどについて書きたいと思います。

 

医学部を卒業後、2年間の臨床研修を経て、麻酔科を自分の専門領域に選びました。県立高校時代には野球に熱中、進学校ではありましたが勉強よりスポーツ担当で、唯一、有機化学が好きだという理由だけで教師か医者を目指し、結果的に医学部に入った自分にとって、医師の世界というのは権威的な雰囲気も強く、あまりなじめそうにありませんでした。

 

また、高校時代に祖父ががんで入院治療を受けていたときの疑問から、がん治療や医学への関心が出てきていたことも事実でしたが、医学部での実習では、外科で行なわれるがんの治療にやはり違和感を感じ、そちらに進むことはありませんでした。そんな中、消去法で選んだのが麻酔科でした。

 

麻酔科というと、皆さんにはあまりなじみがある領域ではないと思います。仕事の場は「手術中」が中心となるため、患者さんと長期間にわたりお付き合いをすることがありません。眠ってしまっている患者さんが、手術中にリラックスしているのか、それとも痛みを感じているのか、血圧、脈拍、体温、尿量、ときには大がかりな機械を使いながらモニターし、臨機応変に対応しなくてはなりません。

 

麻酔科医は手術中の痛みをなくすために存在しますので、痛みだけを専門に扱う「ペインクリニック」という専門領域は、麻酔科医が中心になって発展してきました。私も大学病院でペインクリニックを研修し、その効果に興味をもちました。

 

いまでこそ、ペインクリニックは、専門に扱う医療機関が増えたため知られるようになっていますが、私が開業したころは、痛みを専門に扱うクリニックはめずらしい存在でした。生まれ育った神奈川県藤沢市の辻堂という小さな町で開業したクリニックでは、神経ブロックなどの特殊な方法で、他院では治らない痛みを治すという評判がたち、とても多くの患者さんに来院していただきました。ときに1日300人もの患者さんが受診され、患者さんからも「痛みが楽になりました」とおっしゃっていただくことが多く、その当時はかなり天狗になっていたと思います。

 

ところが徐々に、ペインクリニックのテクニックを駆使しても、痛みが治まらない患者さんや、痛みは軽くなっても、疲労感、抑うつ感や不安感などがとれない患者さんが増えてきたのです。

 

いまでこそ、慢性の痛みに悩んでいる患者さんの多くは、オーソモレキュラー的に考えると、強いストレスの影響を長期間受け続けており、自律神経とそれに関係する栄養状態が劣悪になっていることが理解できるのですが、その当時は、抑うつ感や不安感などの症状に対しては、安定剤や抗うつ剤を処方して、まさにお茶を濁していました。

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溝口徹(みぞぐちとおる)

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