いつも約束の時間に遅刻してくる人の「本当の理由」
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◆悪気はないのに……遅刻癖のメカニズム

悪気はなく、間に合わせようという気持ちはあるのに、いつも待ち合わせに遅刻してしまう……このような悩みを持っている人、友人や知人に遅刻癖がある人を持っている人もいらっしゃると思います。

 

遅刻は、ADHDの人に多い行動の一つです。
では、なぜ遅刻してしまうのでしょうか。

 

ADHDの人で、「衝動性」の特性が強い場合には、事前に計画を立てません。
「大丈夫! 急げば何とか間に合うだろう」という感覚だけで動きがちなのです。さらに「不注意」の特性があると、仮に計画を立てることができても、計画どおりに行動することができないことが多いのです。

 

遅刻のメカニズムに、ADHDの3つの特性のうち、衝動性と不注意の2つが関わっていました。

 

遅刻も、「だらしなさ」「怠け癖」として非難の対象になることがあります。しかし、きちんとしなきゃ、今度こそと思っているのに失敗を繰り返してしまうという人にとって、遅刻がどのようなメカニズムで起きているのかがわかるということは、目からウロコ!ではないでしょうか。

 

さらに、ADHDには、時間処理の障害(Temporal processing)といって、時間の経過を感覚的につかむ能力にかかわる障害もあると言います。

 

この障害は、待ち合わせや、長期間かけて行う物事の計画を立てるときに、見積もった所要時間と実際にかかった時間との間にギャップを生じさせており、その結果、計画倒れを導いてしまうことが多いのだそうです。

 

◆メカニズムが分かれば対処できる!

「遅刻癖」も、こうしたメカニズムがわかってくると、実行可能な対処法を考えることができます。

 

これまで約束事をしても無計画のままだった人なら、まず、その日の計画を立てること、所要時間の計算が間違っているのであれば、タイムログを計測して、自分の行動の所要時間を正確に見積もることなどがあります。

 

中島先生が、ADHDの理解や、診断がつくことを「免罪符」ではない、単なる「レッテル貼り」ではないと強調されているのは、このためです。

 

ADHDの診断の有無に関係なく、ADHDの人に見られる行動に思い当たるところが多く、そのために「生きづらさ」を感じている、ADHDの人のように時間や物の管理がうまくできず悩まれている人のことを、中島先生は「ADHDタイプ」としています。

 

本書の対処法は、医師の診断を受けていないけれども、ADHDの人に見られる行動によって「生きづらさ」を感じている人でも使うことができるものです。

 

日本の精神科でのADHD治療の主は薬物療法ですが、薬物療法を受けるためには医師の診断と、適切な薬物の処方が必要となります。薬には副作用もあります。程度によって、薬物による治療があった方がよい、必要な場合もあるかもしれませんが、薬物療法だけではADHDの「生きづらさ」を解決することは難しいのだそうです。

 

そのため、日本だけではなく、研究が進んでいる海外でも、心理社会的治療(心理社会的介入とも言う)と言って、社会生活を行うための補助を受けることや、社会生活が自力で行えるようになるための指導を受けることが注目されています。

 

中島先生は、日本でも認知行動療法によって、薬物療法だけに頼らない「生きづらさ」からの改善ができないかを研究されており、そこで培ってきた対処法が本書のメインテーマとなっているのです。

 

◆人知れず悩まれている人へ

ADHDの診断を受ければ治療を受ける環境が近くなりますが、診断を受けておらず、また、精神科を受診するほどひどくはないけれども、できれば何とかしたいと、人知れず悩まれている人もいらっしゃるのではないかと思います。

 

また、中島先生が取り組まれているような認知行動療法の治療を受けたくても、その環境にないという人もいらっしゃるかもしれません。

 

認知行動療法のうち、まず最初のステップとして、心理教育があります。

 

これは、自分の障害についての基本的な知識を得たり、同じ悩みを持つ人と話し合ったり、自分の状況を分析することを言うそうですが、これはひとりでも行うことができます。

 

医師の診察時に受ける説明も、心理教育の一種ですし、雑誌や書籍から情報を得るのも同様だそうです。

 

大人のADHDについては、最近、多くのメディアで特集が組まれるようになり、ADHDの診断を受けた著者が自身の体験を書いたもの、漫画でわかりやすく解説したもの、もう少し専門的な一般教養書など、様々な種類の書籍が相次いで出版されています。

 

中島先生は、こうしたものから一通りの情報を入手した人や、認知行動療法による対処法を試してみたい人に向けて、本書のほかに、書き込みが可能なワークブック形式のセルフヘルプ本の活用を勧めています。

 

こうした本を使った対処法の実践は、一人でも始めることができます。

 

親友と一緒に半年がかりで資格試験に挑戦したAさんは、勉強期間中、参考書1ページ分の学習が終わるごとにスマホで写真を送り合い、お互いに褒め合うことをご褒美にしました。

 

この事例で言う「ご褒美」は、「社会的報酬」と言われるものだそうです。
ADHDの診断を受けている人やADHDタイプの人には、人間的な魅力があり、社交性がある人が多いというプラスの面があります。

 

この特性を上手に利用すれば、単調な対処法も、より効果が上がるかもしれません。

 

 

この記事は『もしかして、私、大人のADHD?』(光文社新書)より一部を抜粋、再構成してお届けしました。

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もしかして、私、大人のADHD?認知行動療法で「生きづらさ」を解決する

中島美鈴(なかしまみすず)

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