50歳を目の前に、ついに叩いたドア 『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』

吉村博光 HONZレビュアー

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』幻冬舎
橘玲/著

 

 

2019年は、新しいことを二つ始めた。一つはゴルフだ。バブル期の過剰なリゾート開発を許すことができず、誘われても逃げ続けてきた。もう一つは投資信託だ。就職活動の頃から、金融は虚業だという思い込みがあり、銀行や証券などを毛嫌いしてきた。

 

だが私は、来年50歳になるのを前に、新しい景色を見たくなった。そして、これまで叩かなかったドアを叩いてみた。ただ、周囲を見渡してみると、そんなヤツはあまりいない。きっと若いころに、私よりも、しっかり考えて生きてきた証拠だろう。

 

こんな歳になって、ゴルフ場のラフで「あっちチョロチョロ」「こっちでポチャン」と駆けずり回っているのは、実はたいそう恥ずかしい。

 

ただ、うまく飛んでいったときの嬉しさは、言い表しようがない。私の場合、その「嬉しさ」が恥ずかしさを凌駕している。

 

ゴルフは楽しい。バブル期の開発はいけなかったかもしれないが、スポーツに罪はない。考えてみると「スキーは行くのにゴルフは行かない」というのも、変な話だ。それに、ゴルフを始めて、つきあいの幅も読書の幅も大いに広がった。

 

そこで、ゴルフの本も紹介したいのだが、今日はもう一方のドア。お金の本を紹介する。

 

私はこれまで「給料を稼ぎ、税金は会社に任せ、残った分を趣味にあてる」程度の考えしかもっていなかった。しかも、その趣味とは競馬(投機)である。本書を読んで、ハッキリとわかった。これまでの私は「最悪」の一語である。

 

社会に出てから25年。もっと早くに本書を読んで実践していれば、わが家の経済状況は今とはまるで違っていただろう。妻よ。子よ。申し訳ない。しかし、もはや霧は晴れた。直ちに、実践するしかない。残された時間がどんなに少なくとも、私は迷わない。

 

私は本に携わる仕事をしてきたので、本書を含めて様々なお金の本を横目でみてきた。しかし、若いうちは十分な時間も知恵も原資もなかったため、胸に響かなかった。タイミングもあると思う。今年出会えて良かった。本書の核となる考え方を抜粋したい。

 

もったいぶらずにお教えしましょう。これが、お金持ちの方程式です。資産形成=(収入-支出)+(資産×運用利回り)

足算と引算と掛算だけでできた、小学生にでもわかりそうな方程式です。しかし驚くべきことに、世界じゅうのひとびとを虜にしてきた「金持ちになりたい」という夢が、このたった1行に凝縮されているのです。  ~本書「1世界にひとつしかないお金持ちの方程式」より

 

書名の「黄金の羽根」とは、制度の歪みがもたらす幸運のことだ。本書は、それを手に入れて、確実にお金を増やす方法論を紹介している。制度の歪みというと、濡れ手で粟を想像してしまうが、そうではない。上の方程式がベースにある。時間は必要だ。

 

共働きで支出を抑え、残ったお金を安定した運用で増やしていけば、突飛なことはしなくても資産を築ける、と本書は教えてくれる。また、お金持ちは支出を合理的にするので、お金持ちには見えないということも書かれている。若いうちは、気づかないことだ。

 

また、本書には、持ち家か賃貸か?生命保険は得か損か?といった、多くの人が悩むテーマから、もっと視野の大きい制度の歪みまで書かれており、本書の知識が役に立たない人はいないだろう。お金の本はあまり読まない方も、騙されたと思って読んでみてほしい。

 

私は「お金について」の新たなドアを叩くと決めたとき、最初にこの本を読むことを決めた。それは、本書が世の中の動きに合わせて何度か丁寧に改訂されていたことを、知っていたからだ。たくさんの本を見てきた、私の人的資産が活きている。

 

2020年、私はどんな新しいドアをノックするのだろう。これからも、たくさんの本の知識を活かして、今まで避けてきたことに敢えて挑んでいきたい。そのほうが刺激も大きいに違いない。私は、本の仕事を通じて、なんとありがたい経験をしてきたのだろう。

 

『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』幻冬舎
橘玲/著

この記事を書いた人

吉村博光

-yoshimura-hiromitsu-

HONZレビュアー

出版取次トーハン就職後、海外事業部勤務。オンライン書店e-honの立ち上げに参加。その後、ほんをうえるプロジェクトの初期メンバーとなり、本屋さんの仕掛け販売や「AI書店員ミームさん」などの販促活動を企画した。一方でWeb書評やテレビ出演などで、多くの本を紹介してきた。50歳を機に退職し今は無職。2児の父で介護中。趣味は競馬と読書。そんな日常と地続きの本をご紹介していきたい。


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