“自信”を生まない「日本的平等」の害悪!ケント・ギルバートに聞く「本当の平等」とは
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ryomiyagi

2021/02/11

「ほめられても謙遜しろ」「自己主張するな」そんな文化が身に染みついている日本人には自信が欠けていた……。『日本人の自信を取り戻す「ほめる力」』では、日本を愛する国際弁護士と、数々の企業を「ほめ育」で変えてきたコンサルタントが徹底議論!今回は本書の共著者の一人で弁護士、タレントや著作家としても活躍するケント・ギルバートさんが、アメリカ人の視点から、自信のない日本人たちが陥っている状況を分析します。

 

 

みんなが一番?間違った「平等」観

 

お遊戯会にお姫様が5人、運動会ではみんなで手をつないで一緒にゴール、そんな光景が見られるようになった昨今。こうした日本の「みんな同じ」を重視する体質が、自信のない日本人を生んでいるとケント・ギルバートさんは指摘しています。

 

たとえば、最近の運動会で、1等・2等・3等などの順位をつけないといったことです。ゴールの前でみんな手をつないでゴールしましょう……という学校もあると聞きました。こういうことを平等だと考えている先生がいるわけです。

 

「みんな同じ」が平等で良いことだと考えて順位を付けない教育は、個人の特別な才能やその成果を認めない、ほめないということでもあります。それでは子供の自身が育つわけもありません。
このように日本人が平等を「みんな同じ」ということだと解釈している一方で、“人種のるつぼ”と言われるほど多様な人々が住むアメリカにおける「平等」は全く違うものです。

 

その基本的な考え方は、人それぞれ人種、宗教などが違っても権利的には同じであるというものです。それぞれの違いを認め合ってこそ平等です。人はそれぞれ違ってかまわない。それぞれが神に与えられた才能や障害があっても、平等に社会に参加できることを「結果の平等」ではなく、「機会の平等」と言います。従って、他人が持っていない優れているところを祝おうというのがアメリカにおける平等なのです。

 

これは、日本の平等観にはない考え方です。アメリカのような人と違っていいという価値観、そしてそれにもとづいて人と違う才能をほめること、それが欠けていることが、日本人の自信を育てる機会を奪ってしまっているようです。

 

ヒーロー不在の日本史教育

 

「自分の国の歴史に誇りを持てなければ自信など育つはずがない」
そう言うケントさんは、戦後の自虐史観教育も日本人の自信喪失に関わっていると話します。

 

ここで行われたのは、日本が太平洋戦争で悪いことをした国だと洗脳するだけでなく、日本人の誇りともいえる歴史上の英雄(ヒーロー)の物語を奪うことでした。……(中略)今の子供たちが勉強している歴史の教科書を見てください、そこには日本の歴史上のイキイキとした姿はほとんど描かれていません。ひたすら「鎌倉幕府が成立した年は?」とか「江戸時代に行われた改革の名前は?」といった年号や固有名詞を暗記させられます。

 

アメリカで育ったケントさんは、テキサス州独立のためたった200人で3000人のメキシコ軍に立ち向かったデイビー・クロケットの話や、父親の大切にしていた桜の木を切り倒してしまったことを正直に告白した初代大統領ジョージ・ワシントンのエピソードを知り、そこから、誇りや自身、人として大切なことを学んできました。
ところがそうした歴史上のヒーローを知る機会のない日本人は、誇りや自身を得る機会を奪われているのです。

 

今の自信のない日本人は、「お前たちはちっぽけな存在だ。無力な国民だ」と感じさせるためのGHQの作戦が成功してしまった結果だとケントさんは分析しています。

 

失敗にばかり注目する「減点主義」

 

ケントさんは、チャレンジできる環境がないことも自信のない日本人を作り出している原因だと述べます。

 

自信というのは、何かをやってみて、それが成功して初めてつくものです。たとえば自転車に乗ってみて、最初はたくさん転ぶかもしれないけれど、やがて乗りこなすことができれば自信がつくわけです。このようなチャレンジができる仕組み、つまり自信を付けられるような環境が日本の社会にあるかというと……非常に少ないと私は思っています。

 

例えば、日本で起業したとしてそれが儲からず倒産したとなれば、その後は銀行からの信用を失いお金を借りることができず、二度とビジネスに挑戦できません。日本は一つの失敗が命取りになってしまう環境なわけです。
しかし、ITベンチャー企業の聖地・アメリカのシリコンバレーでは事情が違います。シリコンバレーでは起業しようとするとすぐに投資家から資金が集まります。そして興味深いことに、投資家らが重視するのは、「起業家に失敗経験があるか」ということです。一度失敗したからこそビジネスの課題をよく理解しているはずだし、それを踏まえて再挑戦するなら自信がある事業なはずだと、失敗の経験をプラスに評価するのが、アメリカの投資家なのです。
そんな環境だからこそアメリカでは、少し自信がある人はどんどん起業していくのだそう。

 

だから日本の皆さんに言いたいのは、「減点主義」ではダメだということです。それでは新しいことはできませんし、いつまでたっても自信は生まれません。

 

こうしてケントさんの目を借りてみると、日本には自信を育てる環境が圧倒的に不足していることが分かります。日本が、そして自分自身が変わるために、『日本人の自信を取り戻す「ほめる力」』はそのきっかけを与えてくれる一冊です。

 

文/藤沢緑彩

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日本人の自信を取り戻す「ほめる力」

日本人の自信を取り戻す「ほめる力」

ケント・ギルバート/原邦雄

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