「疑問」「質問」が無いのは何も理解していないから…正しい答えを導くための「知識システム」の作り方
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BW_machida

2021/11/09

 

記念すべき(?)第100代総理大臣に岸田氏が指名されるや、衆議院の解散と総選挙の開催が宣言された。すでに、そんな御大層な宣言以前に、永田町はコロナや経済対策などどこ吹く風と選挙対策に躍起だったが……。国民の誰もが抱く諦めムードの中、総選挙が行われた。

 

「今度こそは」と、何度思ったことだろう。選挙のたびに、「このままではマズイ」「こんな議員たちに任せてはおけない」と思いつつ、まずは選挙に行くかどうかと迷い、次いで誰に投票するかとほとほと困り果ててしまう。
国民の、選挙権を有する人たちのほどんどが同じくする思いに違いない。
『知ってるつもり 「問題発見力」を高める「知識システム」の作り方』(光文社新書)によれば、「知ってるつもり」「わかってるつもり」が最も良くない状態だという。著者は、東大理工学部を卒業し、宮城教育大学、東北福祉大学で教授を務め、15万部というロングセラーを誇る『わかったつもり』(光文社新書)の著者でもある西林克彦氏だ。
すでに還暦を迎え、興味の有る無しに係わらず見続けてきた日本政治に対して、なんとなく「知ってるつもり」になっていた私には、改めて思い知らされるものが数多くあった。

 

大して知らないのに「知ってるつもり」でいられるのを不思議に思われるかもしれません。それへの回答は簡単です。「知ってるつもり」の知識は、孤立した他と関連しない知識ですから、そこから疑問や推測を生み出すことなく、わからなくならないので「知ってるつもり」でいられるのです。よく知らないので疑問を生じることがないから「知ってるつもり」でいられるのです。

 

本書は「孤立した知識」とは何かを解説し、それらが正しく知識であるにもかかわらず、どうして問題解決に至らないのかを植物を例に上げて説明する。
確か小学生の頃に、植物は「根」と「茎」と「葉」からできていると習った。テストで、「植物のカラダのつくりは何か」と問われ「根・茎・葉を持つ」と答えれば正解をいただけたわけだが、果たして本当に正解なのだろうか?
数十年も前に正解した問題を、その後、おそらく抱いたはずの疑問や何かもひっくるめて「なかったことに」して済ませてはいないだろうか? 正直私は、その後感じた(はずの)幾つもの疑問を、一切合切無かったことにして生きてきた。
ぼんやりと感じていたそれは、日ごろ目にする木や草は説明できたとしても海藻やコケのような、余りにも形状の異なるものではどうなのだろう? などの素朴かつ曖昧な疑問である。ましてや、同じく日常的に目にする大根や白菜の類は、どこが根で、どこが茎なのか、漠然と悩みこそすれ「植物なのは間違いないのだから根・茎・葉はあるはず」と、思考停止させてしまっていたように思う。

 

まず、葉の役割は何かと言えば、よく知られたように光合成することです。光合成になにが必要かと言えば、まず光ですが、これは光合成をするエネルギー源ということでしょう。デンプンを作るために必要な材料は、水と二酸化炭素です。二酸化炭素は空気中から得るのでしょうし、水は根から得るのです。(中略)
離れた葉と地上を繋ぐのが「茎」なわけです。「木」では幹ということになりますが、物理的にもしっかりとした、そして水をちゃんと根から送ることのできる「茎」が必要となります。

 

おおよその植物ならば、「根・茎・葉を持つ」で間違いはないのだろうが、海藻やコケは違う。これらに「根」や「茎」は無い(海藻の根は水分補給ではなく岩につくための仮根)。しかし、それこそが海藻やコケの特性であり、ゆえに形状は植物を特定するものではない。では何が植物を特定するのかと言えば、それはやはり光合成なのだろう。光合成ならば、海藻やコケにも共通する。といった、異なる形状の「植物」を前にして「どこが根で、どこが茎で、どこが葉」なのかわからなくなる、疑問を持つことが必要らしい。
本書は、この「本当にわからなく」なることこそが大切と力説する。そして、「わからないことがわからなければ、正しい答えは導けない」のだ。間違いなくその通りである。

 

さらに本書は、もっと生活に即した…私たちの暮らしを支える政治についても、正しく理解するための手順をわかりやすい例を示して解説してくれている。

 

たとえば、歴史の分野を取り上げて見ましょう。厩戸皇子が冠位十二階や十七条憲法を制定したと知ったとしましょう。これだけでは孤立した知識です。せいぜい「厩戸皇子は人材登用や国の形を考えた素晴らしい人だ」くらいのことで終わりかねません。
そこで「その前はどうなっていたのか」と考えることを勧めたいと思います。(中略)
そして、この作業は「支配の仕方」という「共通性」を前提としていることは言うまでもありません。
冠位十二階が制度改革であるなら、その効果やその後の官僚機構がどのように変化していったかという疑問も意識的に立てられるかもしれません。考えてみれば当たり前ですが、事件・制度改革の前後を知らなければその事件・制度改革の「個別特性」などわかるわけがありません。

 

などなど、おそらく著者は、そんなことなど意識していないのだろうけれど、本書『知ってるつもり 「問題発見力」を高める「知識システム」の作り方』(光文社新書)を読めば読むほど、常日ごろ、政治や議員に対して不平不満を並べるだけの我が身の不甲斐なさを思い知らされる。
ただそれと同時に、「知れば知るほど言えなくなる」的な、生きていく上で必要な「悪性」とか、呑まねばならない「理不尽」や「矛盾」が存在するのも確かだ。そしてそれが、生きるために必要なスベだったりもする。
この世がすべて正解で満たされているわけではない……。と、大人になった私は知っている。物事の本質を正しく理解することは必要であっても、だからといって導き出される正解が、常に正しい選択だとは限らないのが世の中なのだ。

 

本書は、「知ってるつもり」でありがちな「孤立した知識」にどう対応するのかということを述べてきました。いつでも何に関しても知識システムを構築して対応する必要があるわけではありません。しかし、必要な時に対応する方法はあるのだ、多少面倒かもしれないけれど、孤立した知識を取り込んだ知識システム構成の方向はこのように考えられると述べてきたつもりです。

 

と、著者は語る。
そうだ。必要なことを、知りたいと思うことを、正しく理解するために必要な「知識システム」の構築法さえ分かっていれば、イザと言う時に正しい答えを導き出してくれる。
本書『知ってるつもり 「問題発見力」を高める「知識システム」の作り方』(光文社新書)は、自らの人生においてこそ必要な、「正しい解答を導き出すための方法」を教えてくれる、何度も読み返すべき一冊だ。

 

文/森健次

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知ってるつもり

知ってるつもり「問題発見力」を高める「知識システム」の作り方

西林克彦

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