『ギフテッド』著者新刊エッセイ 藤野恵美
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ryomiyagi

2022/12/06

恐るべき子供たち(アンフアン・テリブル)をめぐる物語

 

新刊『ギフテッド』の主人公は「T大卒の女性」という設定になっています。

 

この作品を構想していたころ、私は某社で『きみの傷跡』という「大学生が主人公の恋愛小説」を連載していました。その作品の打ち合わせで大学時代の話をしていて、担当編集者が東大出身であることを知ったのです。そして、ほかの出版社の担当編集者にも大学時代の思い出を聞いてみたところ、このひとも東大だったのか……と判明することがつづき、手元に集まった「東大卒女性のエピソード」が面白く、ぜひ、次の作品で書きたいと思って、この『ギフテッド』の主人公像ができあがったのでした。

 

学歴というものは、なかなかにセンシティブな話題です。それと向き合うことで価値観や人間性があぶりだされるようなところもあり、大っぴらに話すのは品がないとされているからこそ、小説の題材にしようと考えました。

 

それから、今回の作品で意識したことは、同時代性です。主人公は就職氷河期世代ならではの苦労によってやさぐれており、作中の時間軸はコロナ禍で、姪の中学受験はかなり現実に即したものになっていて、令和の東京で子育てをする大変さを描いています。

 

掲載誌が「ジャーロ」だったので、ミステリーということも少し意識して書きました。ひとは死ななくて、謎の提示もささやかなものですが、いちおう、伏線があって、意外な展開が用意されています。

 

執筆中に、文部科学省が特異な才能のある子供への支援に乗り出すという報道がありました。本作では願いをこめて「幸せな結末」を描きましたが、現実世界でもひとりでも多くの子供が救われてほしいものだと思います。

 

作中でのギフテッドの定義や特徴については上越教育大学の角谷詩織氏の研究に負うところが大きく、参考文献はつけなかったのですが、ここで感謝の意を申し上げておきます。

 

『ギフテッド』
藤野恵美/著

 

【あらすじ】
頭がいい女子だから受け取れなかった、いくつもの幸せ。そんな私が、彼女の背中を押していいのだろうか。賢い子どもに生まれたって、強く生きられるわけじゃない。賢い子どもを産んだって、簡単には育てられない。高い知能を持つことはギフト? それとも試練?

 

ふじの・めぐみ
1978年生まれ。大阪芸術大学卒業。2004年「ねこまた妖怪伝」で第2回ジュニア冒険小説大賞を受賞しデビュー。著書に『ハルさん』『ショコラティエ』などがある。現在、大阪芸術大学客員准教授。

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