akane
2018/07/27
akane
2018/07/27
Genre: Hard Rock, Proto-Punk, Garage Rock, Blues Rock
Fun House-The Stooges (1970) Elektra, UK
(RS 191 / NME 104) 310 + 397 = 707
Tracks:
M1: Down on the Street, M2: Loose, M3: T.V. Eye, M4: Dirt, M5:
1970 (a.k.a. “I Feel Alright”), M6: Fun House, M7: L.A. Blues
聴けばいまそこに、まさに「大暴れ」中の、獣のような奴らがいることがわかる。血か汗か、とにかくあらゆる体液が全身を濡らし、爬虫類のようにぬめりながら、目を光らせ、野獣のように唸り、または喉も裂けよと咆哮する奇怪な男は、のちに日本では「淫力魔人」との称号を与えられるシンガー、イギー・ポップだ。
八方破れのハード・ロックに乗せて、彼はこんな詞を歌う。
「主よ!/あー、ほー!/やめて!/あの猫見たか?/イェー、お前のことだ/彼女は俺を『TVの眼』で見たんだぜ』」(M3「T.V.アイ」)――この支離滅裂と出所不明の熱情こそが、ストゥージズだ。本作は後世のロッカーたち、とくにパンク・ロッカーに聖典としてあがめられることになる、伝説のセカンド・アルバムだ。
ストゥージズは「ガレージ・ロック」シーン出身のバンドだ。ガレージ・ロックとは、アメリカの60年代の一時期にあったサウンド・スタイルを指す。ビートルズらの影響のもと、10代の若者たちがこぞってバンドを組み、自宅の「ガレージ」で練習したときに生じてしまった、なにやら荒削りで、猛々しくも心を駆り立てる、エキサイティングなロックのモード――これが「変異」して、ストゥージズになった。
名作と賞される(しかし売れなかった)第1作を経て、彼らはよりヘヴィに、より「むき出し」になる。衝動という衝動すべてをさらけ出したかのような、異形のロックがここにある。前述のM3、そしてM5は、いったい幾度カヴァーされたことか。酩酊を誘う魔術的なギター・リフが連続する様は、原始人の宗教儀式みたいだ。豚の悲鳴のようなサックスを大きくフィーチャーしたM7など、フリー・ジャズ風味ですらある――が、そこにポップのシャウトが加わると、ジャズとはならない。殺気立った、狂気のブルースになる。これが、ストゥージズだ。
ちなみにストゥージズとは、20年代より映画やTV番組で繰り返し人気となったコメディ・グループ「The Three Stooges(日本では「三ばか大将」)」に由来している。ポップによると「ちゃんと本人に許可はとった」とのこと。また、ポップの、異様に体脂肪率が低い、細身なれども筋肉質の体躯は、映画『ロード・オブ・ザ・リング』の悪鬼兵オークの肉体モデルともなった。つまり、筋金入りの「知性ではなく野性」のロックが、ここにある。
次回は74位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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