akane
2018/07/23
akane
2018/07/23
Genre: Rock, Pop, Merseybeat
Please Please Me-The Beatles (1963) Parlophone, UK
(RS 39 / NME 264) 462 + 237 = 699
Tracks:
M1: I Saw Her Standing There, M2: Misery, M3: Anna (Go to Him), M4: Chains, M5: Boys, M6: Ask Me Why, M7: Please Please Me, M8: Love Me Do, M9: P.S. I Love You, M10: Baby It’s You, M11: Do You Want to Know a Secret, M12: A Taste of Honey, M13: There’s a Place, M14: Twist and Shout
イギリスにおける――だからつまり、これが正真正銘の――ザ・ビートルズのデビュー・アルバムだ。ロックにとって最も重要な季節だった60年代、つねに時代の先頭に立ち続けたのが彼らであることは、論をまたない。
とはいえ本作は、さすがに後年のごとく、音楽的アイデアの奔流がほとばしり出て止まらないような状態では、まだない。演奏力も、想像力も、「クラブで演奏しているバンド」の域を出るものではなかった。だがしかし「そんな段階なのに、すでに」とんでもなく「かわいらしい」のだ。溌溂とした魅力に満ちあふれているのだ。
若き4人がここで世界を魅了した最大の要因は「ロック・バンド」の闊達なる楽しさ、その表出だった。ギター(×2)、ベース、ドラムスというコンボ・スタイルで、メンバー全員が楽器を演奏し、コーラスし、ヴォーカルもとる……という、だれもが思い浮かべる「ロック・バンド」の典型的スタイルを世に広めた第一人者は、じつは、ビートルズだ(これ以前の時代は、歌手とバック・バンドという構成が多数派だった)。つまり「やんちゃな兄ちゃん」たちが横並びで組む「チーム」としてのバンドも、この4人が出発点だったと考えていい。
そしてこれが、まさに「アイドル」的に受けた。近年ならばワン・ダイレクション(1D)が「21世紀のビートルズ」なんて言われていた。つまり、超がつく「アイドル」としてデビューしたのが、このときのビートルズだった。一面、イギリスに連綿と続く、ボーイ・バンドの始祖もまた、彼らだったということを本作は示している(ところで日本でよく口にされる「ボーイズ・グループ」「ガールズ・グループ or バンド」というカタカナ語は、英語としての意味は一切成さないので注意が必要だ。1Dみたいな存在は、英語の世界では、あくまで「Boy Band」と表される)。
本作は、全14曲のうち6曲が「黄金時代」にあったアメリカのポップ、R&R、R&Bヒットのカヴァーであるせいで、50年代にも通じる、向日性のひまわりみたいな大らかさ、気の置けなさにも満ちている。そんな空気のなかで跳ねるのが「あの4人」なのだから、だれがどう聴いても金切り声を上げるしかない。捨て曲などあるはずもないが、オリジナルのM1で幕を開けるのはかぎりなく正しい。カヴァーならレノンが歌うM10が僕のお気に入りだ。
次回は75位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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