akane
2018/06/15
akane
2018/06/15
Genre: West Coast Hip Hop, Gangsta Rap, Hardcore Hip Hop
Straight Outta Compton – N.W.A (1988) Ruthless•Priority, US
(RS 144 / NME 205) 357+ 296 = 653
Tracks:
M1: Straight Outta Compton, M2: Fuck tha Police, M3: Gangsta Gangsta, M4: If It Ain’t Ruff, M5: Parental Discretion Iz Advised, M6: 8 Ball (Remix), M7: Something Like That, M8: Express Yourself, M9: Compton’s N the House (Remix), M10: I Ain’t tha 1, M11: Dopeman (Remix), M12: Quiet on tha Set, M13: Something 2 Dance 2
彼らのデビュー・アルバムは、史上初めて、ギャングスタ・ラップの「威力」を、全米の隅々にまで知らしめた記念碑的な1枚だ。良識層からは轟々たる非難を浴び、FBIや警察など法執行機関から正面切って叩かれながらも、本作は売れに売れた。逆にその「悪名」こそがこのアルバムを、彼らを成功へと導いていった。
アルバム・タイトルは「コンプトンから直送」という意味だ。コンプトン市とは、ロサンゼルス郡の南部にある自治体で、黒人とヒスパニック層が多く住み、貧困率も犯罪率も高く、荒れ果ててすさんでいる――という、そんな「現場」から、さながら戦場ルポのように届けられたハードなラップが本作には詰まっている。
なかでも、タイトル曲(M1)の緊張感はただごとではない。冒頭「なんでもないぜ。またべつのクロンボが死んだだけ」と吐き捨てられた直後、まるで空襲警報のサイレンのごとく鳴り響くループに乗って、全身全霊でもって「憤怒のラップ」が叩きつけられる。地元警察による黒人蔑視、不当な暴力を告発するM2もすごい。天地が逆さになったって、本作以前のアメリカで「フ××ク・ダ・ポリース!」と連呼される曲がヒットするなんてことはあり得なかった。つまり本作は「扉を開いた」。黒人でもギャングスタでもないリスナーまでもが無数に「彼ら」の側についた。
これらナンバーでは、アイス・キューブ、MCレン、そしてイージーEがラップしていた。タイトかつ、スリリングなトラックは、ドクター・ドレーとDJイェラの手によるものだ。別稿でも書いたとおり、ドレーはのちにプロデュース業などでとてつもない大金を稼ぐ。アイス・キューブはソロ活動のみならず、俳優や映画監督としても成功する。そして、実際に元ドラッグ・ディーラーだったイージーEは、エイズの合併症にて94年に他界する。N.W.Aはすでに91年に解散していた。
N.W.A (Niggaz Wit Attitudes) とは「でかい態度で上等切ってるクロンボ」とでもいった意味だ。だから彼らは「自分は不当に抑圧されている」と感じることがある人々全員にとっての、無二の親友(畏友)やヒーローたり得た。つまり、この激しくも「ストレート」きわまりないヒップホップは、原初的なロックンロールとまったく同じ機能を高次元で実現していた。ゆえに本作は多くの人々の心を打った。「聴く者の魂」を鼓舞して、勇気の松明にボッと火をともしてくれた。
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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