akane
2018/06/08
akane
2018/06/08
Genre: Avant-Rock, Noise Rock, Alternative Rock
Daydream Nation – Sonic Youth (1988) Enigma, US
(RS 328 / NME 41) 173 + 460 = 633
※90位、89位の2枚が同スコア
Tracks:
M1: Teen Age Riot, M2: Silver Rocket, M3: The Sprawl, M4: Cross the Breeze, M5: Eric’s Trip, M6: Total Trash, M7: Hey Joni, M8: Providence, M9: Candle, M10: Rain King, M11: Kissability, M12: Trilogy_(a) The Wonder, M13: Trilogy_(b) Hyperstation, M14: Trilogy_(z) Eliminator Jr.
その活動歴の長さ(結成は81年)、いつも変わらぬ超然とした佇まい、息を吸って吐くかのようにノイズでいっぱいのロックを生み出し、前衛アートとストリート文化の境界線を自由自在にまたぎ越える――そんなところから、「この時点ですでに」ニューヨークのインディー・シーンの象徴と見なされ、日本では「アングラ大王」とまで呼ばれていた彼らの、通算5作目となる大作アルバムがこれだ。
ソニック・ユースの最高傑作という呼び声も高い本作は、当初アナログ盤二枚組、収録時間70分超のダブル・アルバムとして発表された。この物量で、重厚かつ緊張感の高い、ノイジーでラウドなギター・ロックが連打される様は圧巻だ。
なかでもベーシストのキム・ゴードンが詞を書き、歌ったM3は印象ぶかい。サイバーパンクSFの大家ウィリアム・ギブソンの作品に想を得たこのナンバーは、無頼系の米作家デニス・ジョンソンの長篇『正午の星々』からの引用で幕を開ける。僕はロウワー・マンハッタンにあったゴードンのアパートメントにお邪魔したことがあるのだが、そこかしこに積み上げられていたペーパーバックの山(C級モッズ小説まであった)を思い出す。これぞ「ニューヨークの」リアル文系インディー・ロックだ。
そのほか、アルバムの最後に収録された「トリロジー」と題されたトラック3つ(M13、M14、M15)もすさまじい。世にもめずらしかった(いや、いまでもめずらしい)「オルタナ・ロックの組曲」だ。アイデア優先、融通無碍のように見えて、じつはかっちりと計算されているのがソニック・ユースの楽曲なので、このような離れ業もできる。
このアルバムへの高い評価を背に、バンドはゲフィンと契約。次回作(出世作ともなった『GOO』90年)はメジャー・レーベルからの発売となる……と書くと「そんなこともあるか」ぐらいに、みなさん思うだろうか。しかしこの当時は、違った。
まさに喧々囂々。「なんでそんな?」と、少なくない数のインディー・キッズが大きなショックを受けた。是か非か、なんて論争まで起こったほどの、大事件だった。そして「ソニック・ユースがゲフィンで成功し、『あそこは悪くないよ』と言ったから」という理由で、ニルヴァーナが同レーベルと契約し、『ネヴァーマインド』(91年)を制作することになったのは、有名な話だ。
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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