akane
2018/07/16
akane
2018/07/16
Genre: R&B, Disco, Soul, Pop, Funk
Off the Wall – Michael Jackson (1979) Epic, US
(RS 68 / NME 242) 433 + 259 = 692
Tracks:
M1: Don’t Stop ‘Til You Get Enough, M2: Rock with You, M3: Working Day and Night, M4: Get on the Floor, M5: Off the Wall, M6: Girlfriend, M7: She’s Out of My Life. M8: I Can’t Help It, M9: It’s the Falling in Love, M10: Burn This Disco Out
エルヴィス・プレスリーが「キング・オブ・ロックンロール」あるいはたんに「キング」と呼ばれたのにならい、「キング・オブ・ポップ」との尊称をのちに戴くことになる、世紀のエンターテイナー、現実ばなれした「王子様」、ダンスするピーター・パン――マイケル・ジャクソンが、そのけた外れの才能と魅力を、ようやく全方位的に発揮し始めることになった、記念すべき1枚がこれだ。
本作は、彼が巨匠クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えた初の作品であり、史上空前のモンスター・ヒット・アルバムとなった次回作『スリラー』(82年)の助走路に位置する1作だ。いや、ジャクソン自身のアーティストとしてのブレイクスルーという意味では、『スリラー』よりもこっちのほうが大きかった。
本作に至るまでに、彼は4枚のソロ・アルバムを発表していた。ソウルの名門モータウン・レコードよりリリースされたそれらの作品にも、名曲や名唱はあったし、ヒット曲もあった。しかし「与えられた曲を歌っているだけ」のアイドル・レコードでしかなかった。兄弟グループ、ジャクソン5の一員として、幼少のみぎりからショービズの世界に身を置いていた彼に求められていたのは、「ちびっこスターのマイケル」のイメージの延長線上にいることだけ、だったからだ。だれも彼の内面や思想、価値観や真の個性などには重きを置いていなかった。
そんな彼の作詞作曲ナンバーが、ソロ・アルバムに初めて収録されたのが本作だ。まずはM1、シングルとして全米1位を獲得。おりしも世界じゅうを席巻していたディスコ・ブームの波に乗り、また同時に、ブームのなかでも傑出した大人気曲として、ありとあらゆる場所のダンス・フロアで愛された(日本では「今夜はドント・ストップ」との邦題が与えられた)。ジャクソンは共作も含むあと2曲を本作に寄せている。堂々たるファンクのM3、M4がそれだ。甘くテンダーな「ボーイフレンド」型の彼なら、M2とM8だ。タイトル・チューンのM5もディスコ・ヒットした。
半ば「眠れる獅子」状態だったジャクソンは、ジョーンズの的確なる指導のもと、本作で音楽的自我に目覚める。そして『スリラー』が、ポップ音楽の地盤全域に史上最大級の地殻変動をもたらす。すべての起点となった本作に記録されているのは、「神様のいたずら」とでも言うべき、奇跡的な瞬間だ。
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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