akane
2018/12/03
akane
2018/12/03
Genre: Country Rock
Harvest – Neil Young (1972) Reprise, US
(RS 82 / NME 71) 419 + 430 = 849
Tracks:
M1: Out on the Weekend, M2: Harvest, M3: A Man Needs a Maid, M4: Heart of Gold, M5: Are You Ready for the Country?, M6: Old Man, M7: There’s a World, M8: Alabama, M9: The Needle and the Damage Done, M10: Words (Between the Lines of Age)
カナダが生んだ、最も偉大なシンガー・ソングライターのひとりであり、ロック史の上に独立独歩の歩みを残すニール・ヤングの代表作のひとつが、4作目となるソロ・アルバムの本作だ。
彼はここでカントリー・ロックを指向した。だから、あの独特の、へろっとして一瞬頼りなさそうな高い声も、定評あるアコースティック・ギターも、「カントリーという様式」に寄り添う形となっている。そこに(こちらも定評ある)ヤングのとんがったエレクトリック・ギターのフレーズがときに突き刺さる、というのが基本構造だ。だからカントリーではあるものの、アメリカの保守性とはおよそ無縁の――というか、まったく逆の位相の――反骨精神満載の「ヤング節」が炸裂する1枚として、後年のオルタナティヴ・ロック・ファンにも人気が高い。日本で言う「アメリカン・ニューシネマ」調の西部劇をイメージすると、本作の印象にかなり近いはずだ。
そんな指向性を象徴するのが「アラバマ事件」だ。本作のM8、そして前作に収録のナンバー「サザン・マン」は、奴隷制の時代から連綿と続く、米南部における黒人差別や搾取へのストレートな批判だった。これらの曲に対して、サザン・ロックの代表的バンド、レーナード・スキナードが反応した。「アラバマを擁護する」との目的で書かれた彼らの曲では、ニール・ヤングが名指しで非難される。その曲「スウィート・ホーム・アラバマ」(74年)は大ヒットし、そしてときに、南部連合旗とともに、反動的な白人の記号として機能する代表的な1曲ともなってしまう。
と、そんな飛び火もおこってしまうぐらい、本作はヒットした。M4がヤング唯一の全米1位となったし、アルバムはこの年同国で最も売れた1枚と認定された。前年にヤングが脱退した、フォーク・ロックのスーパーグループ「クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSN&Y))」の根強い人気もヒットの後押しとなった。
隣にきわめて派手な国(=アメリカ)があるせいで、ときに軽視されがちなのだが、カナダは今日に至るまで数多くの優れた才能を輩出する、静かなる音楽大国(文学大国でもある)だ。その第一陣にあたる人々のなかに、ヤングがいた。60年代、バッファロー・スプリングフィールドの一員として最初に脚光を浴びた彼は、CSN&Yでのウッドストック参加を経て、この70年代に大きく飛躍していく。
次回は37位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
この100枚がなぜ「究極」なのか? こちらをどうぞ
Twitterはこちら@dsk_kawasaki
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.