akane
2019/06/07
akane
2019/06/07
Genre: Rock, Pop, Psychedelic Rock
Revolver – The Beatles (1966) Parlophone UK
(RS 3 / NME 2) 498 + 499 = 997
Tracks:
M1: Taxman, M2: Eleanor Rigby, M3: I’m Only Sleeping, M4: Love You To, M5: Here, There and Everywhere, M6: Yellow Submarine, M7: She Said She Said, M8: Good Day Sunshine, M9: And Your Bird Can Sing, M10: For No One, M11: Doctor Robert, M12: I Want to Tell You, M13: Got to Get You into My Life, M14: Tomorrow Never Knows
(前編はこちら)
この曲が、M1「タックスマン」と、M3「アイム・オンリー・スリーピング」にサンドイッチされている様は、見事と言うほかない。ジョージ・ハリスン作の前者は、ハード・エッジなロックンロールだ。後者、「まだ眠いんだから起こさないで」ということだけを歌う、レノンらしいユーモアが光る曲だ。この3曲の幅の広さ、これらの断面がきれいに並ぶところに、彼らのマジックがある。もうひとつの「断面」、リンゴ・スターが歌う「イエロー・サブマリン」(M6)も人気曲だ。
また「アンド・ユア・バード・キャン・シング」(M9)のような、初期から変わらぬ金看板「ギター・オリエンテッドなビートルズのロックンロール」も、きっちりとヴァージョンが更新されていることも、忘れてはいけない。マッカートニーとハリスンの「流れるような」ツイン・リードの見事さは、パワー・ポップのみならず、「ギター・ポップ」なる和製英語の理想像のひとつをも垣間見させた。
そんな大充実の本作は、一面、彼ら初の「ドラッグ・アルバム」とも呼ばれている。LSDやマリワナの影響だ。そうなった理由は、このときのかの地が「世界の若者文化の首都」だったからだ。いわゆる「スウィンギン・ロンドン」というやつだ。
モダン・ジャズとR&Bとスカをこよなく愛する「モッズ族」、ミニ・スカート、ポップ・アートに「前衛」アート、「ドラッグ」文化にフリー・セックス、なんと自国開催のサッカーW杯でイングランドが初優勝!……と、このときのロンドンは、きらびやかに、無垢に、恐れを知らない若者たちが、まさに「明日をも知れぬ」未来へと突進していこうとしていた。この空気を、ビートルズの4人も吸ってしまう。
4人の古い友人であるクラウス・フォアマンが制作した、ジャケットの印象深いアートワークは、ヴィクトリア朝の世紀末を彩った異才、ビアズリーの線画からインスパイアされたものだ。「古いもの」を転生させて最前衛にすることにかけて、ヨーロッパの若い芸術家(もしくはちんぴら)には伝統の芸があったのだが、その最新の成果とも言えるものが、このときのイギリスの路上には吹き荒れていた。
そんな渦中にビートルズの4人がいたことは、ありていに言って「奇跡にも近い幸運」だった。お陰でロックはここに「新しい命」を得た。「うまく使えば」幾度でも再生可能な「命の種」とも言えるアイデアをも、得ることができた。その事実の輝かしき記憶こそが、この1枚の隅々にまで満ちている魅惑的な脈動の正体なのだ。
次回は最終コラム「荒れに荒れた『究極100枚』ランキング・チャートを総括する」です!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
この100枚がなぜ「究極」なのか? こちらをどうぞ
Twitterはこちら@dsk_kawasaki
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.