akane
2018/12/14
akane
2018/12/14
Genre: Soul
Live at the Apollo, 1962 – James Brown (1963) King, US
(RS 25 / NME 125) 476 + 376 = 852
Tracks:
M1: Introduction to James Brown and The Famous Flames (by Fats Gonder), M2: I’ll Go Crazy, M3: Try Me, M4: Think, M5: I Don’t Mind, M6: Lost Someone, M7: Medley: Please, Please, Please / You’ve Got the Power / I Found Someone / Why Do You Do Me / I Want You So Bad / I Love You, Yes I Do / Strange Things Happen / Bewildered / Please, Please, Please, M8: Night Train
彼の初めてのライヴ・アルバムが本作だ。「とてつもない」情熱が燃え盛り、情念がほとばしる、まさに「ゴッドファーザー・オブ・ソウル」の異名どおりの、ジェームス・ブラウンのすさまじいパフォーマンスが、これでもかと盛り込まれた1枚だ。
なかでも圧巻は、M7のメドレーだ。頭とお尻を「プリーズ、プリーズ、プリーズ」で挟んだ、後年のライヴでもお馴染みのこの構成は「ダイナマイト!」と言うしかない。このアルバムの大ヒットにて、ブラウンは「ソウルの天下」を獲った。
本作に収録されているのは、ニューヨークはハーレムのアポロ・シアターでのステージだ。収録は、なんとブラウンの「自費で」おこなわれた。なぜならば、所属レーベルであるキングが、ライヴ盤の制作に難色を示したからだ(旧曲ばかりのライヴ盤は売れない、と彼らは言った)。しかも、この当時のブラウンのキャリアは(いまとなっては、信じがたいことだが)かなり行き詰まっていた。
前出の「プリーズ、プリーズ、プリーズ」(56年)は彼のデビュー曲であり、ヒット・シングルでもあった。しかしそのあとが続かず、このころは、ジリ貧と言っていい状態にまで追い込まれていた。そこでブラウンの天才性が(別名、野性のカンが)発動した。「ライヴならば、俺は負けない!」と、彼は確信していたからだ。その確信が正しかったことは、M2が鳴り出した瞬間にわかる。
この時期のブラウンは、コーラス&ダンス・グループのザ・フェイマス・フレイムズを率いていた。その模様は今日、映像でも確認できる。『T.A.M.I. ショウ』(64年)や『スキー・パーティー』(65年)などの、つまりあの、極細パンツを穿き、まるで重力がないみたいに「滑るように」ステップを踏む「あのJB」がここにいるわけだ。幼き日のマイケル・ジャクソンが、食い入るように見つめた「あのJB」のことを僕は言っている。ムーンウォークほか、彼のパフォーマンスの至るところにブラウンの巨大な影響があることは、ジャクソン自身がよく語っていた。
意外なところでは、ストゥージズと並ぶ「パンクの祖父」系ガレージ・バンド、MC5のウェイン・クレイマーがJBの大ファンで、自分たちのライヴ前にはLSDを決めながら本作をよく聴いていたそうだ。だからファンクだけでなく、パンクですら「JBがいたから」生まれたのかもしれない。
次回は34位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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