akane
2019/06/03
akane
2019/06/03
Genre: Rock, Pop, Psychedelic Rock
Revolver – The Beatles (1966) Parlophone UK
(RS 3 / NME 2) 498 + 499 = 997
Tracks:
M1: Taxman, M2: Eleanor Rigby, M3: I’m Only Sleeping, M4: Love You To, M5: Here, There and Everywhere, M6: Yellow Submarine, M7: She Said She Said, M8: Good Day Sunshine, M9: And Your Bird Can Sing, M10: For No One, M11: Doctor Robert, M12: I Want to Tell You, M13: Got to Get You into My Life, M14: Tomorrow Never Knows
そして第1位は、これだ。ほぼ満点、997点のスコアを記録したのが、ザ・ビートルズ7枚目のイギリス盤オリジナル・アルバムである本作だ。2位の『ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』(67年)は984点だったから、その差は13点。つまり本作が「ぶっちぎり」の1位だということだ。米英の「聴き巧者」たちの総意が「やはり、これだ」と認めた決定的な1枚は、このアルバムだった。
それも当然、本作はあらゆる意味で革命的な1作だった。「ロック音楽を再発明した」アルバムだと巷間よく言われる。彼らの次作である『サージェント・ペパーズ』(23位、67年)ですら、本作における「創造性の爆発」を、ただ敷衍していったものでしかない。「この瞬間」の彼らの神懸かりぶりが尋常ではないことは、アルバム最終曲「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」(M14)1曲を聴いただけでわかる。
この曲は、いわゆるラーガ・ロック、シタールを使用したインド風ポップを基調としたミッドテンポのナンバーなのだが、ほぼワン・コードで作られている。そこに、録音したテープを編集した「同じフレーズが機械的に繰り返す」ループ・サウンドや、テープを逆回転させた効果音を次から次に投げ込む手法は、90年代以降のヒップホップの発想と寸分変わりない。こうした、凝りに凝った「トラック」の上で、座禅を組んだまま空中浮揚しては人民に訓を垂れるいかがわしい聖者よろしく、「謎かけ」のような歌をジョン・レノンが熱く詠唱する……というロックンロールだ。
アイデアも、手法も、技術も、それを可能にした「若々しく、燃えさかる」スピリットも、そのすべてが革新性に満ちていて、「魅力的」なのだ。これ1曲だけで「90年代ブリット・ポップ」の、一体いくつの曲のネタとなったことか……ここにシングル曲「レイン」を加えれば、オアシスのネタの6割ぐらいは埋まるはずだ。
だが本作は「インド」と「スタジオ技術」だけではない。たとえば「エリナー・リグビー」(M2)は、「ロックの領域」を――あっけないほどにも簡単に――拡大してしまった1曲だ。弦楽八重奏をフィーチャーしても「しかしあくまでも」ロックであり得ることを、ポール・マッカートニーは易々と証明してしまう。
(後編に続く)
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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