akane
2018/08/17
akane
2018/08/17
Genre: Rock
Transformer-Lou Reed (1972) RCA, US
(RS 194 / NME 72) 307 + 429 = 736
※70位、69位の2枚が同スコア
Tracks:
M1: Vicious, M2: Andy’s Chest, M3: Perfect Day, M4: Hangin’ ‘Round, M5: Walk on the Wild Side, M6: Make Up, M7: Satellite of Love, M8: Wagon Wheel, M9: New York Telephone Conversation, M10: I’m So Free, M11: Goodnight Ladies
なんでこんなに低位なのか?!――と私憤を抱かずにはおれないほどの、名盤中の名盤がこれだ。ルー・リードのソロ第2作となる本作は、彼の長きキャリアのなかでも、まず最初に名を挙げるべき代表作だ。つまり「ある特定の種類の」ロックの最高峰に位置する1枚だということだ。体制に、世間の「主流派」に背を向け続ける(or 向けざるを得ない)人々に寄り添い、そして決して裏切らないタイプのロックの。
テーマの主軸は、今日で言うLGBTQの、しかも「恵まれていない」人々の人生そのものだ。「性倒錯者」なんて言葉が当たり前だったこの時代、その魂ゆえに白眼視され、凄絶な迫害を受けたため、故郷のすべてを捨てて出奔、そしてニューヨークに「上京」してくる人が、どれほどいたことか……まさにそんな状況を歌ったのが、「ワイルド・サイドを歩け」との邦題が与えられた、永遠の名曲であるM5だ。
マイアミからヒッチハイクしてきたホリーは、眉を抜いて脚を剃り、男性から女性になる。そして「Hey babe, take a walk on the wild side」と、だれかに向かって呼びかける。そのほか、ヴァースごとに違う人物が登場しては「ワイルド・サイドを歩きなよ」と呼びかける。そんな模様がスケッチされていく。
ワイルド・サイドとはなにか? 具体的には、大都会で売買春すること、かもしれない。ドラッグの使用かもしれない。退廃であり背徳であり、都市の闇に沈む汚泥のような人生、かもしれない……だがそんなすべてを、まるで慈父のようにやさしく、あたたかく包み込むような視線がこのM5を、いやアルバム全体をつらぬいている。
リードはこう言っているのだ。「世間がいかに酷薄だろうが」「お前『だけ』が間違ってる、と責められようが」――知ったことか!(=Take a walk on the wild side)と。あたかもそれは、地球上の各地で孤立していた少年少女たちが、マーベル・コミックス『Xメン』シリーズの「ミュータント」というタームに激しく反応したのと同質の効果をもたらした。「ロックとは『こっち側』のもの」なんだ!と。
そのほかも名曲ぞろいだ。M3、M7も「畢生の」ナンバーだろう。本作はヴェルヴェッツのファンだったデヴィッド・ボウイと、ジギー期だった彼のバンドのギタリスト、ミック・ロンソンが共同プロデュースしている。彼のギターが冴えるM1もいい。どんな基準でも30位以内は当然だろう?と僕は思うのだが……。
次回は68位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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