akane
2018/06/11
akane
2018/06/11
Genre: New Wave, Power Pop, Pop Punk
This Year’s Model – Elvis Costello & The Attractions (1978) Rader,UK
(RS 98 / NME 256) 403 + 245 = 648
Tracks:
M1: No Action, M2: This Year’s Girl, M3: The Beat, M4: Pump It Up, M5: Little Triggers, M6: You Belong to Me, M7: Hand in Hand, M8: (I Don’t Want to Go to) Chelsea, M9: Lip Service, M10: Living in Paradise, M11: Lipstick Vogue, M12: Night Rally
もし明日、宇宙人が地球にやって来て「ニューウェイヴ・ロックとはいかなるものか?」とあなたに質問したら、迷わずこのアルバムを聴かせればいい。本作はエルヴィス・コステロのセカンド・アルバムであり、このあとも長く共同作業を続けることになる名バンド「アトラクションズ」と彼が初めて組んだ1枚だ。
たとえば、M1、M2、M9、M11。この狂躁的で、強迫観念的なまでにカラフルな感じが「時代の音」だ。1曲だけというならシングルにもなったM4は外せない。この曲はぜひMV(ミュージック・ヴィデオ)付きの鑑賞をお薦めしたい。
白一色のスタジオに4人の演奏者がいる。大きな眼鏡をかけた痩せた男(コステロ)が、細いパンツの内股で、不穏なビートに合わせて、足首も折れよと妙なステップを踏みながら歌い、フェンダー・ジャズマスターを弾く。キーボーディストは画面に対して横向きで、椅子なしで立って、オルガンをゆすりながら弾く……。
そう、キーボード。なかでもとくに、シンセサイザーだ。前年のパンク・ロック革命によって、この時代のロンドンにおいては「新しいこと」が過度に称揚されていた。歴史の継続をなにもかも切断して消し去ったかのような真っ白なキャンバスの上に、極彩色のポップな絵を描こうとしていたのが当時の「ニューウェイヴ」勢であり、その絵筆となったもののひとつが、きらびやかな「シンセの花」だった。そして本作で、エルヴィス・コステロはそこに「乗っかろう」とした。
なぜならば、まさしく彼こそが「古い時代の人」だったからだ。パンクとはなんの係累もない。90年代以降の彼は、アメリカーナほかルーツ音楽をもモノにする。また巨匠バート・バカラックと共演するなど「本格派の人」として大人のリスナーから高評価を得るが、そんな素養はデビュー前からあった(当たり前だが、こうした類の核心的教養は10代のうちに完成し、内面化されるものだ)。それら全部を封印し、「ニューウェイヴ・スター」として天下をとろうとしたのが、このころだった。
たぶんその反作用で、本作の歌詞における「流行」への言及がシニカルで苦みに満ちている点も見逃せない(M2、M4、M8、M11など)。この独特の「ねじれ構造」こそ、初期「コステロ節」の真骨頂だ。「今年のモデル」の正体とは、じつは彼自身の内部にあった強迫観念、狂躁を外面化させたものだったのかもしれない。
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
この100枚がなぜ「究極」なのか? こちらをどうぞ
Twitterはこちら@dsk_kawasaki
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.