akane
2019/01/21
akane
2019/01/21
Genre: Modal Jazz
Kind of Blue – Miles Davis (1959) Columbia, US
(RS 12 / NME 79) 489 + 422 = 911
Tracks:
M1: So What, M2: Freddie Freeloader, M3: Blue in Green, M4: All Blues, M5: Flamenco Sketches
前回からの「ブルーつながり」というわけではないのだが、こちらもかなり有名な「ブルー」の1枚、しかもジャズ界の最高峰に君臨する「ブルー」だ。60位のジョン・コルトレーン『ア・ラヴ・スプリーム』(65年)以降初めて、当ランキングで取り上げることになるジャズ・アルバムである本作は、「帝王」の異名を持つジャズ・トランペットの鬼才、マイルス・デイヴィスの傑作だ。
ロック・ファンのあいだでは、そもそも彼の人気は高い。まず人間がロックだからだ。目つきや顔に気合いが入っていて、突っ走る感じがかっこいいからだ。トランペットという楽器もいい。吹いている姿が、まるでギタリストのようにクールに見える。そう、邦題を「クールの誕生」とした彼の57年の編集盤は、90年代にロンドンのアシッド・ジャズ連中が「Rebirth of Cool」なるコンピレーション・シリーズを出すときのイメージの大元ともなった。エレクトリック期の『ビッチェズ・ブリュー』(70年)はもちろん大人気で、「ロック・ファンが最初に聴くジャズ」の最上位にあるのが彼の諸作品だ。そして一番人気が、もちろん本作だ。
本作にてデイヴィスは「モーダル・ジャズ」を確立した、と言われる。彼はいわゆる教会旋法、機能和声が支配的になる以前の、16世紀以前の音楽理論にもとづいた旋法(モード)を研究した。「コードから自由になる」ためだ。従来のモダン・ジャズ、つまりビバップもハード・バップも、いかにその演奏のなかにアドリブがあったとしても、和声の縛りのもとで得られる自由には、かなり大幅な制限があった。つまり、自由度が足りなかった。そこで彼はこう考えた。「ならば、それ以前の時代からある」無調とも言えるスケールを、新たな秩序の基盤としたらどうか、と。そして「モードに寄り添う」ことで、「コードに従う」よりも、格段に増した自由な空間のなかを縦横に走り抜けることを可能とする。ここでジャズは一気に「進化」する。これが「モーダル・ジャズ(日本ではモード・ジャズとも言う)」の成立だった。
言い換えると、ロック・ファンが想像するジャズの典型(モダン・ジャズ以降、エレクトリックやフリー・ジャズ以前の典型)が、本作そのものだ。ポール・チェンバース、ジミー・コブのリズム隊を据え置きに、キャノンボール・アダレイ、ビル・エヴァンス、ウィントン・ケリー、そしてコルトレーンも本作に参加している。
次回は23位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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