akane
2018/10/15
akane
2018/10/15
Genre: New Wave, Worldbeat, Funk
Remain in Light-Talking Heads (1980) Sire, US
(RS 129 / NME 54) 372 + 447 = 819
Tracks:
M1: Born Under Punches (The Heat Goes On), M2: Crosseyed and Painless, M3: The Great Curve, M4: Once in a Lifetime, M5: Houses in Motion, M6: Seen and Not Seen, M7: Listening Wind, M8: The Overload, M9: Fela’s Riff, M10: Unison, M11: Double Groove, M12: Right Start
ロック・シーンに衝撃を呼んだ話題作であり、今日もなお、彼らの最高傑作との呼び声も高い、4枚目のアルバムがこれだ。前2作に続いて、プロデュースをブライアン・イーノが担当。彼とメンバーが傾倒していたアフリカ音楽、なかでもナイジェリアの巨星、フェラ・クティのアフロビートを研究。自らの音楽スタイルと大胆にミックスしていったその行為が賞賛された。80年代初期の音楽風景を一変させた。
トーキング・ヘッズのアフリカ音楽への接近は、イーノとの関係が始まったころから顕著となった。その旅の終着点として、このアルバムでは「まるでアフリカのバンドのように」音楽を組み立てようとした。たとえばポリリズムのビートに乗って、ひとつのコードで延々と演奏し続ける。それを録音して「一番よかったパート」を選択、今度は「そのパート」だけをまた延々と繰り返し演奏する……後年、サンプルした音源で「ループ」を組む、ヒップホップやダンス音楽の発想を、彼らは先取りしようとしていた。しかも「手弾き」という、バンドマンらしい方法で。
この新しい方法が生んだ「効果」の顕著な例は、シングルともなったM4だ。ひたすらに「鳴り続ける」アフリカン・ファンクが、ニューウェイヴの切れ味を得て、祝祭とも混沌ともつかない人工楽園へと聴く者をいざなう。アメリカン・ライフの「幸せの基準」に疑義を投げかける歌詞は、まるであの世の門にいる説教師みたいだ。神経症的に痙攣するデヴィッド・バーンのヴォーカルと、非人間的に「再生産され続けるビート」が、相反する「意味」を言葉にぶつけ続けるこの緊張構造は、まさに現代アートのそれを彷佛させた。彼らのこの達成が、とくに玄人筋をうならせた。
ところで、どうも世界じゅうで日本でだけ、本作へのバッシングがおこなわれていた、らしい。「白人のロック・バンドが黒人音楽をあからさまに導入するのは間違っている」のが理由だという。意味がわからないのだが、もしそう考える日本の人がいるのなら、その人は洋楽を聴いてはいけない。「他民族」がやっているのが洋楽なのだから。また日本人の演奏でも、それがロックなら聴いてはならない。トーキング・ヘッズの「このやりかた」こそが、ロックの原点から脈々と流れ続ける思想に基づいているものだからだ。それは、人種でも民族でも音楽ジャンルでも「あらゆる壁」を飛び越してやるんだ!という、冒険者の心意気のことだ。
次回は51位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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