akane
2019/02/01
akane
2019/02/01
Genre: Rock, Blues Rock, Country Blues, Country Rock
Let It Bleed – The Rolling Stones (1969) Decca, UK
(RS 32 / NME 52) 469 + 449 = 918
Tracks:
M1: Gimme Shelter, M2: Love in Vain, M3: Country Honk, M4: Live with Me, M5: Let It Bleed, M6: Midnight Rambler, M7: You Got the Silver, M8: Monkey Man, M9: You Can’t Always Get What You Want
映画監督のマーティン・スコセッシが愛して止まない1曲、「ギミー・シェルター」(M1)が収録されている1枚だ。この曲を彼は、自身の監督作でこれまで3度も使っている(90年の『グッドフェローズ』、95年の『カジノ』、06年の『ディパーテッド』)。同曲および「無情の世界」との邦題の最終曲(M9)におけるゴスペル調コーラスにてサンドイッチされたのが、イギリス盤で通算8枚目のスタジオ・アルバムである本作だ。
このときのザ・ローリング・ストーンズは「内も外も」大混乱だった。「外」の混乱は「60年代が終わる」ということだ。カウンターカルチャーが攻勢を保ち、世界を変革できるかのような幻想が振りまかれていた季節がまさに幕を閉じようとしている時期に、本作は制作された。「内」の混乱は、ブライアン・ジョーンズだ。
初期ストーンズのカリスマ的リーダーだったジョーンズは、ドラッグの影響もあり、次第に能力を低下させる。そして本作の制作中にバンドを脱退、約1カ月後に自宅プールで溺死する。後任ギタリストの、弱冠20歳のミック・テイラーとともに、本作のレコーディングは進められていった。
ストーンズとは切っても切れない、まるで呪いのような死や血糊の臭気ただよう陰惨は、ここから本格的に、作品そのものを覆い始める。連続殺人鬼を歌ったM6の「わかりやすい」禍々しさもあるが、表題曲のM5にこそ「惨」の反映は最も大きい。それを裏返したテンダネスが、伝説的なブルースマン、ロバート・ジョンソンのカヴァーであるM2だ。本作は全英1位、全米3位を記録するヒットとなった。
ここに充満しているのは、混沌のなかで流血しながら踊っているような状態が極限に達し、ついに破裂してしまった「散華の美」だ。結果的にそれが「生々しい」命のありかを指し示すようなロックの誕生へとつながっていった。この「ストーンズらしいロック」の結晶化を評価して、前作『ベガーズ・バンケット』(68年、37位)と並び、本作を彼らの最高傑作と呼ぶ声は多い。黄金時代のなかの黄金だ、と。
アメリカン・ルーツ音楽に大きく接近する、という路線が、より一層推し進められたのも本作だ。「ルーツに立った」からこその闊達がここにある(サイケ時代の大失敗と比較してみるといい)。プロデュースは前作に引き続きジミー・ミラーだ。
次回は20位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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