akane
2018/12/21
akane
2018/12/21
Genre: Soul, R&B, Pop
Dusty in Memphis – Dusty Springfield (1969) Atlantic, US
(RS 89 / NME 50) 412 + 451 = 863
Tracks:
M1: Just a Little Lovin’, M2: So Much Love, M3: Son of a Preacher Man, M4: I Don’t Want to Hear It Anymore, M5: Don’t Forget About Me, M6: Breakfast in Bed, M7: Just One Smile, M8: The Windmills of Your Mind, M9: In the Land of Make Believe, M10: No Easy Way Down, M11: I Can’t Make It Alone
あの「サン・オブ・ア・プリーチャー・マン」(M3)が入っているアルバムが本作だ。タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』(94年)ほか、幾多の映画やTV番組などに使用され、幾多の歌手にカヴァーされたあのソウル・クラシック・ナンバーの初出は、彼女の歌だった。60年代のイギリスが生んだ至宝であるシンガー、ダスティ・スプリングフィールドの名唱だった。
彼女にとって5作目となる本作は、初の本格的「ソウル」アルバムとなった。大西洋を越え、メンフィスやニューヨークで録音がおこなわれた。デビュー当初よりソウル音楽好きとして知られたスプリングフィールドは、ここでついに、米ソウル・シンガーの女王、アレサ・フランクリンが所属するアトランティック・レコードと契約。同社の常用スタジオであるメンフィスのアメリカン・スタジオにて、「名うての」スタジオ音楽家たちのバックアップを得て、本作に挑んだ。
ソングライター陣も豪華のひとことだ。お馴染み〈バカラック=デイヴィッド〉のM9、ランディ・ニューマンのM4、M7、そして〈ゴフィン=キング〉の手によるナンバーは4曲もある(M2、M5、M10、M11)。それから言うまでもなく、前出のM3。これはそもそも、フランクリンのために書き下ろされた曲だったのだが、彼女に却下され、お蔵入りしていたものだった。スプリングフィールドによって発掘され、歌われたこのナンバーは、アルバムの先行シングルとして米英でスマッシュ・ヒットを記録。のちにフランクリンがカヴァーすることになる。
が、本作そのものの商業的成績は当時振るわなかった。おそらくは「本格的」すぎたのだろう。しかしときが経てば経つほど、本作への評価は高まっていく。バカラックいわく「3ノーツ(音符を3つ)聴くだけで、それがダスティの声だってわかる」それほどの個性が彼女にはあった。かすかにハスキーな、つまりスモーキー、情感豊かなディープ・ヴォイスが彼女の声質だ。この声がよく伸びる。現在のイギリス最強の女性シンガーと比較して、彼女を「元祖アデル」と評する意見もある。だがアデルにはない、隠し味のような甘さ、せつなさ(つまり、ビター・スウィートの感覚)がスプリングフィールドの声にはある。その彼女が、能力を全開にして「大好きだったソウル」に挑んだ、一世一代の力作がこれだ。
次回は32位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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