akane
2018/11/12
akane
2018/11/12
Genre: Indie Rock, Chamber Pop, Art Rock
Funeral – Arcade Fire (2004) Merge, US
(RS 151 / NME 13) 350 + 488 = 838
Tracks:
M1: Neighborhood #1 (Tunnels), M2: Neighborhood #2 (Laïka), M3: Une année sans lumière, M4: Neighborhood #3 (Power Out), M5: Neighborhood #4 (7 Kettles), M6: Crown of Love, M7: Wake Up, M8: Haiti, M9: Rebellion (Lies), M10: In the Backseat
ある種のシンデレラ・ストーリーを実現したのが、彼らのデビュー・アルバムである本作だ。たとえばそれは、こんなストーリーだ。
なんの奇抜さもない、まさに真実一路の「インディー」ロック・バンドが、ファンだけではなく、メディアや批評家、あるいは先達の音楽家から賞賛され、愛されて、本来の美質をなにも損なうことなく、さらに上へ上へと伸びていく……無条件にいい話だから、ほとんどの場合、実現しない。言い換えると、そんな「いい話」もないままに、90年代の大活況から一転して熱的死へと近づきつつあったのが、この時代の北米シーンだった。ほぼ唯一、このアーケイド・ファイアを例外として。
カナダはケベック州、モントリオール出身の男女混合7人組の彼ら最大の魅力は、その無垢な「音楽愛」だ。たとえばM7「ウェイク・アップ」。彼らはこの曲を、デヴッド・ボウイといっしょに演奏したことがある。05年、TV番組の主催するイベントでのステージだった。ギターを弾きながら、シリアスな表情でリード・ヴォーカルをつとめるボウイのすぐ側に、喉も裂けよとコーラスする若きメンバーたちがいた。ヴァイオリンやアコーディオンなど、あらゆる楽器を手にした、やけに人数が多いバンドがいた。このときアーケイド・ファイアは、(お返しとして)ボウイ畢生の名曲「ライフ・オン・マーズ」や「ファイヴ・イヤーズ」も共演した。そしてこのパフォーマンスが「感涙必至」だとして、音楽ファンのあいだで話題となった。
ボウイだけではない、U2も「ヴァーティゴ・ツアー」(05年から06年)ではたびたび彼らをオープニング・アクトに起用した。ケベックのショウではアンコール時にステージに呼び入れ、ジョイ・ディヴィジョンの「ラヴ・ウィル・ティア・アス・アパート」をみんなで歌った。
こんな夢物語を実現させたのも、本作だ。セルフ・プロデュースで、アメリカ南部の老舗インディー・レーベル、マージ・レコードからリリースされた。お葬式、という意味のアルバム・タイトルは、制作時にメンバーの周辺で9人もの近親者が物故したゆえだ、と言われている。アメリカーナの香りもうっすら漂う、「誠実」だけを絵に描いたような、手作りのインディー・ロックは、とくに「すれっからしの耳」を持つ者の心をこそ打った。このあとも、彼らの快進撃は続いていく。
次回は43位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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