akane
2019/02/18
akane
2019/02/18
Genre: Folk Rock, Electric Blues
Highway 61 Revisited – Bob Dylan (1965) Columbia, US
(RS 4 / NME 64) 497 + 437 = 934
Tracks:
M1: Like a Rolling Stone, M2: Tombstone Blues, M3: It Takes a Lot to Laugh, It Takes a Train to Cry, M4: From a Buick 6, M5: Ballad of a Thin Man, M6: Queen Jane Approximately, M7: Highway 61 Revisited, M8: Just Like Tom Thumb’s Blues, M9: Desolation Row
前回に続きボブ・ディランだ。そして本作は彼の「奇跡の季節」のど真ん中にして、60年代の最重要――いや、ロック史のすべてを俯瞰した上で屈指の「重要」ポイントの座標に、不滅の里程標のように打ち立てられた、そんな1枚だ。
面白いことに、〈ローリング・ストーン〉と〈NME〉のあいだで意見が割れている。〈NME〉は前回の『ブロンド・オン・ブロンド』(66年)のほうを上位にランクしていた。しかし本作を上位に置いた〈ローリング・ストーン〉における2作品の順位差のほうが〈NME〉のそれより大きかったため、3ポイント差でこうなった。僕の意見では「これでいい」。なぜならば本作には、「ライク・ア・ローリング・ストーン」(M1)が収録されているからだ。あの、名曲中の名曲が。
〈ローリング・ストーン〉が選んだ「オールタイム・グレイテスト・ソングス500」の1位がこの曲だ。ディランにとって初の、そして現在までの唯一の全米1位シングルとなった同曲は、ロックが文学以上の「語りの場」となることを実証した。愛唱歌を口ずさむだけで、世界観が、人生観が、思想が、ものすごい速度で刷新されていく「ことがある」事実を示した。あたかも、日めくりカレンダーの全ページを一気に破り去るみたいに、この6分13秒のうちに「それは起こりえるのだ」と……。
サウンド面で決定的な働きをしたのが、アル・クーパーのオルガンだ。彼はギタリストだった。しかしすでにセッションに参加していたマイク・ブルームフィールドがいたから、「ろくに弾けもしない」オルガンでの演奏にスイッチしたのだという。結果、シンプルにして大胆で印象ぶかい、あのフレーズへとつながった。彼のオルガンと「どんな気分がする?(How does it feel?)」との繰り返しだけでも、一度聴いたら一生涯忘れられるわけがない。この曲が、ロックの幼年期を終わらせた。
本作は彼の6枚目のスタジオ・アルバムだ。邦題は「追憶のハイウェイ61」だった。しかし意味的には「ハイウェイ61再訪」とするぐらいが正しい(フィッツジェラルドの「バビロン再訪」のように)。タイトル曲(M7)は、ロバート・ジョンソンを始め、アメリカ史に残る数々の伝説の舞台となった「魂の国道」を叙事詩のように描く。ブルースのM2、M3、M5、それからM8も人気が高い。「廃墟の街」との邦題を与えられたM9も見事な「歌う文学作品」だ。
次回は15位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
この100枚がなぜ「究極」なのか? こちらをどうぞ
Twitterはこちら@dsk_kawasaki
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.