akane
2019/02/04
akane
2019/02/04
模倣から、私は始めます。
元々の職業が『警察官僚』なるものだったことによる——のかも知れません。作品を書き綴(つづ)ってゆくとき、全く新しいものを全く独自の考えで創ってゆく、というのは苦手です。先例・前例を調べ上げ、そこから自分の編み上げたい要素を拾ってゆく、というのが私の創作スタイルです。私に天才のかがやきとか、天賦(てんぷ)のきらめきといったものは皆無です。
今般のノンシリーズ新作『終末少女』の場合、その先例とはまず『アクロイド殺し』でした(他に『遊星からの物体X』『ランゴリアーズ』があります)。着想を得ながら幾度も読み返しますと、なるほど名著です。現代風にいうなら、超絶技巧……『そして誰も』にしろ『オリエント急行』にしろ『ABC』にしろ、クリスティの天賦の才には脱帽します。
ところが、私にはそのようなもの、ありません。私にできるのは、『アクロイド』なら『アクロイド』で、その肝(キモ)を何度も何度も繰り返して味わうことによって、その奇想とその制約を型(カタ)としたとき、『自分にはそのフィールドでどんな飛び方ができるか?』を考えること、それだけです。先人の偉大な型をベースに、型割れにならないギリギリのところまで型破りをやってみる——私の営業は、そんな営業です。
今般の『終末少女』では、もっと偏執的にやってみる、人間としてできるところまで執拗(しつよう)にやってみる——というのが『型』を前提とした『型破り』の方針でした。本格ミステリは読者と作者が戦う文学ですが、どうせ『仕掛ける』ならもっと意図的にもっと徹底的に、お互いの頭がくらくらになるまで戦いましょう——というのが本作のコンセプトです。といって、初読にまさか3時間を要するものではありません。盛りつけも色合いも、青春小説らしくあっさりさせています。
ただ、その気になっていただければ、生涯を通じ何度でも楽しんでいただける。そんなからくりを施した、我が師の『月光ゲーム』30周年に捧げる本格ミステリ、御賞味ください。
『終末少女AXIA girls』
本体2400円+税
世界の終わりは突然始まった。黒の海が大地を沈め、無数の「口」が全てを食い尽くしてゆく。終末から逃れ、天国のような孤島に着いた少女らは、遅れて流れ着いた、謎めいた漂着者らを助ける。しかしそれは、嘘と裏切りに満ちた殺し合いの始まりだった……!
PROFILE
ふるの・まほろ 2007年、『天帝のはしたなき果実』で第35回メフィスト賞を受賞し、デビュー。有栖川有栖・綾辻行人両氏に師事。近著は、『女警』など。
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