akane
2018/05/21
akane
2018/05/21
Genre: Art Rock, Funk Rock, Plastic Soul, Proto-New Wave
Station to Station – David Bowie (1976) RCA, US
(RS 324 / NME 53) 177 + 448 = 625
Tracks:
M1: Station to Station, M2: Golden Years, M3: Word on a Wing, M4: TVC 15, M5: Stay, M6: Wild Is the Wind
グラム・ロッカー「ジギー・スターダスト」ほか、まるで仮面劇のように幾多の「ペルソナ」を演じ、芸術的カメレオンとしてロック界に君臨した大スターにして才人、デヴィッド・ボウイ。その彼の、最も峻烈にして重要な「過渡期」を刻印したとも言えるのが、10枚目のアルバムである本作だ。
この時期のボウイの外見は、とても人気が高い(日本の少女漫画家やファンにも好まれた)。「痩身蒼白公爵(Thin White Duke)」なるペルソナのもとで楽曲を作り、ステージをこなした。痩せた体躯に、短く整えられた淡い金髪、白いシャツ、黒いベストとパンツ……という、戦前ヨーロッパのデカダンス的キャラクターがそれなのだが、実際に彼の内面も崩壊寸前だった。当時ロサンゼルスに拠点を構えていたボウイは、コカイン漬けで、主食は「コショウと牛乳」だった、と本人が語っている。
が、芸術的には、これがすさまじく効果的に作用した。ボウイの、いやロックのマイルストーンと言っていい1曲がタイトル・チューン。重苦しく不穏なオープニングから、歓喜に満ちあふれたコーラス(だが繰り返される言葉は「It’s too late」!)へと至る、10分超の大曲だ。衒学的かつ幻惑的な歌詞は、永遠にファンの頭脳を刺激する。カバラに聖杯伝説に黒魔術にファシズム……そんな要素が、ボウイが大好きなドイツの劇作家ブレヒトや表現主義の手法でもって花開いた1曲だ。
本作のあと、ボウイは当時まだ東西分断下だったベルリンへと移住する。鬼才ブライアン・イーノとコラボレーションして、名高い「ベルリン三部作」を作ることになるのだが、そのイーノをして、三部作の1枚目『ロウ』(77年)は、「ステイション・トゥ・ステイション」という1曲の「まさに続編と言うべきもの」だった、とのちに言わしめるほどの先進性が、すでにここで実現されていた。
一方、これまでのボウイ節、ロックンロールや「プラスティック」ソウルの発展形であるM2、M4、M5も成功している。ジョニー・マティスの歌唱で有名な映画テーマ曲カヴァー(M6)の、堂々のデカダンっぷりも、とてもいい。
おりしもロンドンでは、パンク・ロックの嵐が吹き荒れようとしていた。だがボウイは一切我関せずと自らの芸術道を突き進み、その結果本作は「ポスト・パンクの時代を先取りした1枚」として、後世幾度も繰り返し再評価される名盤となった。
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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