akane
2018/10/22
akane
2018/10/22
Genre: Experimental Rock, Electronica, Ambient, Post-Rock
Kid A-Radiohead (2000) Parlophone, UK
(RS 67 / NME 114) 434 + 387 = 821
Tracks:
M1: Everything in Its Right Place, M2: Kid A, M3: The National Anthem, M4: How to Disappear Completely, M5: Treefingers, M6: Optimistic, M7: In Limbo, M8: Idioteque, M9: Morning Bell, M10: Motion Picture Soundtrack
またレディオヘッドだ。今度は彼らの4枚目のスタジオ・アルバム。大いなる物議、あるいは賛否両論が沸騰する問題作――になりそうな大胆な着想が、あにはからんや、彼らにとって初の全米1位を獲得させることになった。全英1位はもちろん、発売初週にUKプラチナムの認定も受ける……すなわち、大成功作となってしまう。批評家の受けも上々。これが、当時の彼らの「勢い」だった。いつの間にか、音楽シーンで無敵の強さを発揮する「マイティ」レディオヘッドと彼らは化していた。
本作における「大胆な着想」とは、音楽性の一大変更を意味する。3人もギタリストがいる、オルタナティヴ「ギター」ロック・バンドとして出発した彼らが、「それだけではないんだ」との音楽的広がりを求めて成功したのが前作『OKコンピューター』(97年)だった。しかし、そこで名実ともにトップ・バンドとなったとき、「やはり」と言うべきか、中心人物のトム・ヨークは悩んでいた。
ひとつは「レディオヘッドのエピゴーネン」のあまりの多さが問題だった。また、一芸を求められ続けること(「クリープ」の再現をいつも求められる、など)にも疲弊させられた。だからヨークは、以前より惹かれていたエレクトロニカ音楽へと接近する。なかでもアンビエント寄りの電子音楽へと……「ギターなんか、あとまわしでいい」とばかりに、シンセサイザー、リズム・マシーン、ストリングスやブラス・セクションに加えて、フランスの古典的な電子楽器オンド・マルトノも使用された。
つまり、当時のヨークはデヴィッド・ボウイが『ロウ』(77年)を制作したときのような状態になっていた、ということだ。同作でのイーノとヴィスコンティの役割を担ったのは、前々作『ザ・ベンズ』(95年)から組んでいるプロデューサーのナイジェル・ゴドリッチ。しかしボウイとは違って、ここでのヨークは「前人未到の場所」を探してはいない。こんなしつらえなのに「歌もの」ばかりなのには理由がある。彼の目は「自らの内面」へと向かっていた。ヨークのエモーショナルな「インナー・トリップ」と呼ぶべきもの、その壮大なる物語性に人々は魅了された。
それゆえ、アルバムのなかで唯一「ギターが吠える」ナンバー、M6のカタルシスはすごい。電子楽器オーケストラを向こうにまわした熱演だ。日本でのみ、中森明菜のヒット曲(「少女A」)と本作タイトルが似ているとして、小さな話題となった。
次回は49位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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