なぜ歴史は“逆”から読むととたんに面白くなるのか?
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日本史を学んでいて、ふと疑問に思ったことはないだろうか。

 

「ところで、どうしてこうなったんだ?」と。

 

例えば太平洋戦争。
その惨劇と事後の流れは理解できているが、
「そもそも、なんでアメリカと戦争なんかしたんだ?」

 

例えば江戸幕府の終焉。
ペリー来航とか尊王攘夷とか、キーワードは覚えているが、
「なんで江戸幕府って、なくなったんだ?」

 

これは教科書が古い時代から現代に向かって解説されている構成上の問題だ。
「なぜそうなったのか?」という明確な問いを立て過去をさかのぼり検証をする機会が少ない(あるいは時代の流れにそって解説するので、問い掛け方が弱い)ため、明確な答えを得た感触が残らないのだ。

 

「そういった疑問は、歴史を“逆”から学ぶことで解決します」と提案するのは、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)の日本史の先生としてもおなじみ、多摩大学客員教授・河合敦先生だ。河合先生は27年間高校で教鞭をとった経験から、様々な角度から分かりやすく日本史を伝えることに定評がある。

 

「日本史を現代から過去に、さかのぼっていくと、教科書で学んだ時には見えにくかった歴史の因果関係に気がつきます。私は昨年『日本史は逆から学べ』(光文社知恵の森文庫)という書籍を出したのですがおかげさまで10刷りまで行きました。タイトル通り、日本史を現代から古代に逆順にさかのぼっていく内容なのですが、読者の方からは『目からウロコの学び方だった!』と喜ばれたようです」(河合先生/以下同)

 

河合先生は同書の第2弾として『日本史は逆から学べ 近現代史集中講義』(光文社知恵の森文庫)を上梓したばかり。歴史を逆に学ぶメリットとはいったい何だろう。

 

「逆順に学ぶことで、とたんに歴史を面白く感じる方が多いようです。『どうしてそうなったのか?』と問い続けますから一種の推理小説のように読み進められますし、現代と過去が地続きであるという実感も得やすい。歴史への興味がより深まるという声もいただきました。近著の『日本史は逆から学べ 近現代史集中講義』では、安倍内閣を起点に、近現代史をさかのぼっています」

 

実際に“歴史をさかのぼる”とは、どういうことなのか。同書の中身を少しご紹介いただこう。

 

「安倍政権は5年も続いている。これはなぜか? 原因の一つに自民党に“対抗しうる野党がいない”ということが挙げられます。かつての民主党が弱体化したのが原因の一つ。

 

ではなぜ民主党は弱体化したのか? 一度は政権も取ったのに、です。これは政権担当時にマニフェストをあまり実現できず、東日本大震災の対応も上手くなく、国民の信頼を失ったから、といえます。

 

では、なぜそもそも、民主党政権が誕生したのか? これは自民党が国民の信頼を失ったから。今世紀に入っての自民党の政策は所得格差を生み出し、国民に“勝ち組”“負け組”を作りだしたと言われています。そういった不満がくすぶる中でリーマンショックが重なり、自民党は政権の座を追われます。

 

ではなぜ自民党時代に所得格差が広がったのか? これは、小泉政権が長期不況を脱するために、国民に痛みを求める覚悟で、大胆な民営化と規制緩和を進めたからです。『聖域なき構造改革』というスローガンが記憶にある方も多いのではないでしょうか。

 

ではなぜ小泉内閣は、大規模な民営化・規制緩和を進めたのかといえば、少し前にバブル景気が崩壊し、長い間不況から脱せられない状態が続いていたから、なのですね。

 

景気対策のため『官から民へ』を推し進めたわけです。

 

ではなぜバブル景気が起こったのかといえば……。

 

と、まあ、続けていくと、古代まで続くので止めますが(笑)、このようにQ&A形式で問い掛けを続けながら、歴史を逆順にさかのぼっていきます。この方法だと、歴史の大枠・大きな流れが見やすくなります」

 

大人の学び直しにも、受験勉強の補強にも使えそうな一冊。歴史の流れから掴みたいという方、試してみる価値はありそうだ。

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日本史は逆から学べ 近現代史集中講義

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河合 敦 (かわい あつし )

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