「ナンバーワン」を意識する人間だけが「ナンバーワン」になれる。
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agarieakiko

2019/02/25

 

 ある有名なメダリストが私に語った。

 

「世界の壁は厚いが、『日本で日本一になろう』となぜ思わないのか。自分が競うカテゴリー、ジャンルを絞っていけば、日本一になるのは、案外簡単なのだ」

 

 日本に一億三〇〇〇万人がいるといっても、子供や老人を除けば、その中で、ある競技をやっている人口はどれくらい? さらに、まず自分がいる地域では? と限定していくと、当面、自分が競わなければならない相手は、せいぜい、数百人になったりする。

 

 それでも大変だが、漠然と「何百万人」と考えていたときより、ずっと実現性は高まるはずだ。

 

 やりたいことがあるならば、いっそ、その分野での最高峰を目指そう。

 

 建築家から聞いた話だが、ある分野の仕事をピラミッドにたとえると、食っていけるのは、頂点か底辺。底辺はなんでもやるからどうにかなる。上はこれと決めたことを存分にやっていける。中途半端が一番やっていけない。

 

 新聞は、ことさら「~したのは初めて」とか「最も早い」とか「最も大きい」のがニュースバリューだとして強調したがる。でも、仮に阪神の快挙がセ・パ両リーグ通じて最も早かったとしても、アメリカではもっと早い例があるかもしれない。

 

 ナンバーワンよりオンリーワン、という風潮にあるが、対象を狭めていけば、誰でも「ナンバーワン」になれる!

 

「ナンバーワン」になると「オンリーワン」になる。

 

 とある一流のアスリートに、成功哲学について尋ねたら「何それ?」と真顔で聞き返されたことがあった。そんなことを一々考えていないという。

 

 よくあるメンタルトレーニングや成功哲学は、成功していない人しか必要としていない。成功した人間には、必要ないものなのだ。

 

 ある女性金メダリストは、試合後ケーキをワンホールひとりで食べると打ち明けてくれた。

 

 常識的に考えたらとんでもないことでも、彼女にとっては、ケーキをワンホール食べることが「必要」なのだ。その法則は他人に当てはまることではないし、根拠と効果について実証はできない。

 

 成功した人間は、自分に何が必要か「本能」的に感じることができる。言い換えれば、成功しない人間は、自分に何が必要かわからない。自分に何が必要か感じ取れる能力はハウツー本を読み漁っても身につかない。

 

 たとえ成功した人間でも、「ナンバーワン」を維持するのはかくも難しい。自分が「ナンバーワン」であるという自信も、ふとしたことで揺らぐ時代だ。

 

 自分ならではの尺度を、得意分野をつねに持ち続けることだ。それができる人間が生き残る時代なのだ。

 

ナンバーワンになりたければ、分野を限定せよ。

 

 

以上、『新版 成功する男はみな、非情である。』(いつか著、光文社知恵の森文庫)を抜粋・一部改変して掲載しました。

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