BW_machida
2020/10/28
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2020/10/28
日本では、健康は主に生活習慣に主に結びつけられて考えられます。
しかし世界的に見ると、室温と健康の関係が非常に重視される事実があります。
英国では「家の寒さと死亡率の関係」が数十年にわたり調査され、室温が18℃以下になる賃貸住宅には解体命令が出るようになっていますし、WHOの「住宅と健康に関するガイドライン」では、冬の気温は18℃以上に保つべきと勧告されています。
「諸外国では過度な寒さは基本的人権を侵害しているという認識があるのです」。
海外の住宅事情に詳しい前出の今泉太爾(いまいずみ・たいじ)氏はそう言います。
海外スタンダードでは、暖かい室温を保った環境はそれほどまでに重要なのです。
そうした事実がありながら、国土交通省の調査によると、冬の間の日本の家は18℃の基準を満たしていないことが分かっています。特に、リラックスして体を休めるはずの寝室の平均温度は12.8℃と、家の他の場所に比べても低めです。屋外ならばコートを羽織るべき気温で日本人は寝ていることになります。
そうした低い室温で眠ると何が起きるのでしょうか?
豊橋技術科学大学で建築・都市システム学を専門とする都築和代(つづき・かずよ)教授の研究では、寒い部屋での睡眠時には自律神経に負荷がかかっていることが分かりました。「室内の冷たい空気を吸って体が冷え、体が緊張状態になったためではないか」と都築教授は言います。
このように体がリラックスできない状態では眠りが浅くなります。床についている間に実際どれだけ睡眠がとれたていたかの割合を表す睡眠効率も、室温が10℃未満の場合、89%と低く、睡眠中に平均7.6分の覚醒時間が生じてしまっていました。
睡眠の質に影響するのは、室温だけではありません。
湿度も眠りの深さに関係することが分かっています。
慶応義塾大学の伊香賀俊治(いかが・としはる)教授率いる研究チームの調査では、寝室の乾燥を感じるグループでは、感じないグループに比べて中途覚醒する確率が2.9倍、いびきをかく確率が1.6倍高まり、睡眠の質も2.5倍悪くなるという結果が出ました。
日本人の睡眠時間は、世界ワースト1位の短さです。不十分な睡眠時間は、免疫力や脳の働きの低下を招きます。寒さや乾燥といった身近な住居環境を見直すことで、睡眠の質改善に取り組みましょう。
※本稿は、笹井恵理子『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)の一部を再編集したものです
文/ふじさわりさ
『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』光文社
笹井恵理子/著
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