マーケティングアナリストが語るZ世代の新消費トレンド
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ryomiyagi

2021/02/04

 

「『失われた20年』と呼ばれ、バブル崩壊の暗いムードが長引く中、『ゆとり世代』は『第一次氷河期』の余韻が残る時代を生き、一部は『第二次氷河期世代』とも呼ばれました。一方、Z世代は、アベノミクス景気や超人手不足の中、超売り手市場で『バブル期超え』や『ダイヤモンドの卵』と呼ばれました(少なくともコロナ禍前までは)。このように、『ゆとり世代』とZ世代は、連続した世代でありながら、生きた時代背景が大きく違うことがお分かりいただけたと思います。」

 

そんな新時代を生きるZ世代がもっとも大切にしている価値観が、「チル&ミー」だ。「チル」とは、もともとはアメリカのラッパーたちが使っていたスラング「chill out」の略で、日本語では「まったりする」という意味に近い。著者は、ゆとり世代が若かった頃まではかろうじて残っていた縦社会的な、組織に尽くす「for all」の感覚が、Z世代では大きく減り、代わりに「for me」の感覚が強くなってきていると指摘する。ただしこれは、欧米の個人主義とは異なり、あくまでも「同調思考の中で自意識を高める」感覚だという。著者は彼らの見えにくい過剰な自意識を「ミー意識」と名付けた上で、「チル&ミー」がZ世代を理解するキーワードになると述べている。

 

アベノミクス景気のもとで育ち、消費意欲も消費行動も好転したZ世代の消費トレンドは、平成の不況で消費離れの傾向にあったゆとり世代とも、それ以前の世代ともまるで異なる。カフェで行うピクニック「カフェピク」や「チェンジング」「見た目変」などは、2019年上半期にZ世代のあいだで流行したトレンドの代表例だ。気合いを入れ過ぎず、かといって気を抜き過ぎず、手軽に気軽に映えることを目的にした「新インスタ映え」や『100日後に死ぬワニ』に代表されるような時限を全面に打ち出した「新切り口」、そして「新タブー」。この本で楽しいのは、平成生まれの私も耳にしたことのない新語の数々が登場することだ。

 

著者は、「新タブー」を「これまでの日本社会でタブーとされてきた価値観や事柄の中で、Z世代の間ではタブーではなくなってきたモノやコト」と定義している。例えば、ここ数年流行っている「うんこドリル」シリーズや「死」をテーマにしたコンテンツなどがそうだ。

 

また、Z世代特有のニーズのベースには、インスタをはじめとするSNSの存在があることも忘れてはならない。フリマアプリのメルカリの普及なども、Z世代の消費行動に変化をもたらしていると著者は指摘する。

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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