BW_machida
2021/04/23
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2021/04/23
歌舞伎町ナンバー1になった男、越前リョーマは幼い頃、1番しか目に入っていなかった。
「戦隊ヒーローもの」なら1番強くて目立つリーダー的存在の「赤いヒーロー」。勉強でも「世界で1番高い山は?」には「エベレスト」と答えられても、2番目の山が何かなんてことには興味がない。とにかく、あらゆるものごとの順位付けの中で、1番以外目に入らない性格だったという。
小学1年生の頃、リョーマは校内のマラソン大会で6位をとった。十分好成績ではある。しかし、幼いながらも1番に強いこだわりを持っていた彼は「1位になれなかったこと」にショックを受ける。そしてその翌年は必ず1位でゴールすることを誓い、実際にそれを叶えるのだった。
サッカーや野球で勝ったことはあったけれど、「自分ひとりの力で勝った」と感じたのは生まれて初めて。このときの快感が癖になったのか、僕は「もう誰にも負けたくない」と思うようになりました。
1番になる気持ちよさを、いつでも、何度でも味わいたい――こんな気持ちが、今でも僕の原動力になっています。
だから、いつだって1番になりたい。
2番や3番じゃ、気持ちよくないから。
1番になれなかったら、自分で自分を認められないから。
そんな1番にこだわる男がホストの世界に足を踏み入れたのは大学2年生のこと。友人に誘われたことがきっかけだった。
遊び半分でやってみたら楽しくて。大学から行きやすかった埼玉のお店に週3、4回出ていました。小さいお店だったこともあってナンバー1もとれたんですが、大学3年生になって、校舎が都内に移ったことなどをきっかけに歌舞伎町のホストクラブに入店しました。
リョーマにとって、軽い気持ちで始めたホストの職は、ただの「こづかい稼ぎのバイト」にすぎなかったという。しかし、自分のシフトが休みの日に同期が顧客をつかみ売上を上げていると気づいたとき、負けず嫌いの心に火が付いた。大学に通いながら週6日、ホストとして働くようになる。
机の前に座っている間も「同期の〇〇は今頃、女の子と会ってるんだろうな」なんて考えちゃって、仕事をしていない時間がもったいなくてたまらなかった。
次第にホストの仕事に情熱を傾け始めるリョーマだが、歌舞伎町で働き始めたばかりの頃はなかなか指名がもらえず苦労したこともあったという。「みんなと同じことをしているだけでは、みんなと同じ程度の印象しか残らない」、そう考えてリョーマが実践したのが「アイス(氷)交換」だ。
ホストが客と同席する時間は限られている。その中で印象を残すことは難しい。けれども、客席にセットされているアイスペールを交換する雑用は誰がやってもいいことになっている。そこで、客席に呼ばれていなくても、アイス交換を口実にテーブルに顔を出すことを考えたのだ。
お客様は一度にたくさんのホストに会うから、ルックスがいいだけじゃ印象に残らないことも多いんです。だから、お客様に自分を印象づけるためにもアイス交換。実際に、「アイス交換をしに来てくれた子を」と送り指名をもらったこともあります。
そうした地道な努力を続けて、越前リョーマはナンバー1にのぼりつめた。そして現在でも、在籍する高級ホストクラブ『Dew’l(デュール)」で売上、指名本数ともにトップの数字を保ち続けている。「トップになることより、トップを継続することのほうが難しい」と語る彼が、ナンバー1であり続けるために実践していることとは何なのか?
僕は営業後に毎日、自分用のノートを書いています。書き始めてから8、9年。1日もサボったことはありません。内容は、その日に気づいたことや覚えておきたいこと、自分の課題や目標など、いろいろ。書くことで頭が整理できるし、自分がやるべきことも再確認できます。
どんなに疲れていても、酔っぱらっていても書いているというこのノート。時折、フニャフニャな読めない字で書かれていることもあるというが、毎日のこのルーティンを欠かしたことはないという。
目標を達成するためには、毎日の地道な継続が欠かせません。自分で「やる」と決めたことをすぐに投げ出してしまう、つまり、小さな努力を積み重ねていくことができないんなら、成功なんてできっこないんじゃないでしょうか。
越前リョーマが歌舞伎町ナンバー1ホストの座までのぼりつめられた理由は、シンプルだ。常に1番を目指そうとする心意気、そしてそれを実現しようとする努力。それが、彼を歌舞伎町を訪れる多くの女性の心をつかんで離さない、ナンバー1ホストたらしめるものなのである。
文/藤沢緑彩
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