ryomiyagi
2021/02/18
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2021/02/18
そもそもなぜ日本人はほめないのか。
日本人がアメリカに行くと、見ず知らずの人に「あなたの靴ステキね」なんて言われて驚いたという話があります。日本では普段、初対面の人をいきなりほめることも、反対に自分がほめられることもないからです。
原さんは、日本にほめる習慣がなく、またほめることの価値や重要性が認められていない理由を次のように分析します。
そういう文化になってしまったのは、太平洋戦争後の歴史に原因があると私は思っています。戦後、日本は製造業(=モノづくり)で奇跡の復興を遂げました。製造業の世界で「99点」は欠陥品であり、「100点」をとることが当たり前です。だから、ひたすら欠点をつぶし、改善を続けてきました。どんなささいな欠点やミスも厳しく指摘し、ときには罵倒までして、それらを徹底的に潰してきたわけです。
その結果、良い製品ができて経済が発展し、国民は豊かになりました。その歴史の中に「自分をほめる」とか「相手をほめる」という習慣が入る余地は、まったくなかったでしょう。
そうした時代を生きた現在60代以上日本人は、戦後経済をV字回復させ、国民総生産世界2位にまでした当時のやり方に自信があります。だから、現代の教育界やスポーツ界でも高圧的に相手を否定する接し方が普通になり、結果「自分をほめる」ことも「相手をほめる」こともない文化が出来上がってしまったのです。
それでは具体的に、そんなほめない文化から脱却し、自分や他人を「ほめる」習慣をつけるためにはどうしたらよいのでしょうか。
原さんは、日本ではほめ言葉として使われている「謙虚」という言葉の定義を見直すべきだと言います。
日本人の大多数があいまいな定義をしているために、自分を肯定できない原因となっている言葉があります。それは「謙虚」という言葉です。
一般的な辞書で「謙虚」という言葉を調べると、「控えめで、つつましいこと。へりくだってすなおに相手の意見などを受け入れること。またそのさま。」などと書かれています。
そして日本では「謙虚」がほめ言葉になっていますが、このようなあいまいな定義のままで「謙虚」を美徳として受け入れていると、「いつも自分の意見を言わず、常に相手の意見を受け入れること」が良いことになってしまいます。
「謙虚」であろうとするあまり、自分の意見を押し殺したり、さらには自分の妻や子供を「愚妻」「愚息」とへりくだって貶すようなことはしばしばあることです。しかし、自分や他人を卑下することはまさにほめない文化を繰り返しているということであり、ひたすらに自分と相手の自信を奪うだけです。
そこで原さんは、「謙虚」と、その対になる「傲慢」を次のように定義し直しました。
「謙虚」とは自分の道の先達との相互位置関係を見ることであり、「傲慢」とは自分の道の後輩との相互位置関係を見ることである
自分が志す道のはるか先にいる人を見つけ、その人との差を埋めるために努力する、それが「謙虚」ということであり、自分より道の後ろにいる人に対して先にいるからと威張ることが「傲慢」だということです。ここでの「謙虚」には、自分を卑下するという意味は含まれていません。
こうした考え方の転換が、ほめない文化を脱するきっかけになるのです。
また、ほめない文化をやめて「ほめる」習慣をつけるための方法として、他人からの評価をサブ的なものと捉えることも推奨されています。
たとえば皆さんは会社員なら課長や部長、家に帰ったらお父さん・お母さんなどかもしれません。そして、そこでいつも周りに評価されるような行動をしていると思います。しかし、いつもうまくいくわけではなく、周りから評価が得られない時もあります。
これからは、そのような他人の評価はあくまでプラスαと考えましょう。メインの評価は、あくまで自分自身がすると決めるのです。
つまり、自分で自分をほめて評価するということです。そうして自分の評価の中心は自分だと考えるようになると、たとえ周りの人からほめられなかったとしてもそれに振り回されずにいられます。
他者からの評価という「外的要因」に依存する人は、とても弱い存在です。他人から評価されないと頑張れない人は、他者からの評価次第で簡単に潰れてしまします。
自分で自分を見つめる「ほめ育」を取り入れることで、相手の評価はあくまでも参考意見と考えられるようになれば、他人に忖度して行動のスピードが遅くなることがありません。
他人の評価と自分の評価が違うとき、「ありがとうございます。参考にさせてもらいます」と言えるのが、自立であり本当の自信なのです。
人も自分もほめないことが身に沁みついてしまっている日本人。その習慣のつけが、現代日本人の自身のなさにつながっている一方で、ちょっとした工夫で変化を起こすこともできるようです。『日本人の自信を取り戻す「ほめる力」』でさらにその方法を学び取れば、あなたも変わることができるかもしれません。
文/藤沢緑彩
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