選択肢を与えろ!子どもを成長させるケント・ギルバート流「3つの環境」
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ryomiyagi

2021/02/15

「ほめられても謙遜しろ」「自己主張するな」そんな文化が身に染みついている日本人には自信が欠けていた……。『日本人の自信を取り戻す「ほめる力」』では、日本を愛する国際弁護士と、数々の企業を「ほめ育」で変えてきたコンサルタントが徹底議論!今回は本書の共著者で弁護士、タレントや著作家としても活躍するケント・ギルバートさんが提唱する、自信を育む6つの環境の中のうち3つを紹介します。

 

 

「選択する機会がある」環境

 

子どもの成長には「選択する機会がある」環境が必要である。そう語るケントさんは、そうした環境とは正反対な日本を象徴するエピソードとして、元プロテニス選手の佐藤直子さんから、次のようなことを聞いたと言います。

 

彼女が海外でテニスの合宿を開いたときにこんなことがあったそうです。日本からテニス部の高校生たちが来たので、佐藤さんはコートに集まった彼らに「さあ、今日はどういう練習をしようか?」と声をかけました。すると子どもたちは困った顔をして、「いつも先生の言うとおりに練習しているので、特にどんな練習がしたいとかありません」と答えたそうです。

 

上から言われるとおり行動することだけを教え込まれている子どもたちは、いざ自分で何かを決めなければいけないとなっても行動できないのです。
ケントさんは、こうした「選択する機会」が子どもたちに与えられていないことは普段のしつけの中にも見られると指摘します。

 

よく、日本の親の皆さんが子どもに「黙りなさい!」と怒鳴りつけているのを見かけることがありますが、いつもそれが本当に子どものためになっているのか疑問に思っています。
私の家の話で恐縮ですが、まだ子どもたちが小さかったころ、1階のリビングで妻と話をしていたら、子どもたちが突然入ってきて戦争ごっこでワーワーと大騒ぎを始めました。当然、私も「黙りなさい!」と言いました。
でも、それで終わりだと子どもたちは「お父さんの機嫌が悪いから黙らなきゃいけない」と思うだけで、人の顔色をうかがって状況を判断するようになってしまいます。

 

そこで、ケントさんは叱りつけるだけでなく、次のように子供たちに話したそうです。

 

見てごらん。リビングにいた私たちは何をしていると思う? 話し合いをしているのだから。君たちがワーワーやっていると非常に迷惑です。うるさい遊びをしたいなら2階でやりなさい。ここにいてもいいけど、そのときは静かにしてもらうよ。さあ、どっちにする?

 

ケントさんの子どもたちは、こう言われると少し考えて、自分たちから2階に行くと答えました。これこそが、ケントさんが重視する「選択する機会がある」ということです。

 

子どもたちに選ぶ機会すら与えない。18歳で高校を卒業したとたん、魔法みたいになんでも正しい選択ができるようになると考えているのでしょうか?そんなわけはありません。ちゃんと若いときから間違った選択も含めて、自分で選ぶ機会を与えてあげないと、いざ自分で選択しなければならないとき、正しい判断ができない可能性があると思います。

 

「できているところが注目される」環境

 

「できているところが注目される」環境も、子どものために必要だとケントさんは指摘します。
ケントさんがある名門女子高校に講演に行ったときのことです。ケントさんは生徒たちにこんな質問をしました。「過去1か月の間にお母さんに『きれいだよ』と言われた人は手をあげてください」。この質問に挙手したのはたった1人だけでした。

 

そこで講演台から降りて、最前列の人たちに「普段はお母さんにどんなことを言われていますか」と聞いてみたのです。だいたい想像がつくかと思いますが、彼女たちが言われていたのは「勉強しなさい」「テレビを消しなさい」「長電話をしないで」「彼氏を持ってはいけない」「部屋を掃除しろ」「食事を残すな」「食べ過ぎてはダメ」といった内容でした。
つまり、ほとんどの日本のお母さん(おそらくはお父さんも)は、子どもたちに「あなたはダメだ、あなたはダメだ、あなたはダメだ……」と、毎日言っているわけです。

 

子どものできていないところを注意するのは、親にとっては普通のことかもしれません。しかし、ケントさんはこうした子どもの欠けているところを指摘する教育が、日本人の自尊心を低くしていると言います。

 

日本の若者世代は世界的に見ても、自分のことをダメだと思っている割合が高いという政府のデータが出ています。その自尊心の低さが最近の「パパ活」といった行動につながっていくこともあるのでしょうか?

 

反対に、「できているところが注目される」環境では、子どもは自分に価値があると感じることができるようになります。例えば、「服装がだらしない」と注意したいところをかわりに「きれいだよ」とほめることをケントさんはすすめます。

 

お母さんは「あなたはきれいだね。こんなきれいな娘がいるなんて本当に幸せ。あなた、うちの娘きれいだと思わない?」……もうほめ殺しかと思うくらいやってください。
すると、その女の子は毎日鏡を見るようになるでしょう。そして鏡を見て、私はそんなにきれいなのかな、それならもう少しきれいにしようかと考えて、いずれは服装も変わっていくでしょう。
もちろんお母さんの思うようには変わらないかもしれませんが、どんどん自分はきれいなんだ、と自信を持つようになるのです。これが自分を大切にするために欠かせない自尊心になるわけですよ。

 

「信頼がある」環境

 

子どもの自信を育てるためには、親子の間に「信頼がある」ことも大切だとケントさんは自身の体験談から語っています。

 

私の長男が中1のとき、学校でイジメられたことがあります。学校の食堂で自分が嫌な食べものを息子の食事の入ったプレートにのせていたのです。いくら息子がやめろと言っても聞かないので、とうとう息子は頭に来て自分のトレイをひっくり返してイジメっ子のトレイの上にぶちまけたわけです。

 

すると相手は殴りかかってきてケンカに発展。ケントさんの息子は殴り返さなかったものの、二人とも停学になってしまいました。その日、「父さんに怒られる」と震えながらケントさんの帰宅を待っていた息子に、ケントさんはこう言ったそうです。

 

「事情はお母さんから聞いた。……よくやった。お父さんは正しい判断だったと思うよ。学校の規則に違反したのだから停学は仕方ないけれど、君をイジメた相手がやったことはいけないことで、いつまでも我慢しなければいけないわけではない。度を越したときには仕返しをする必要がある。そうしないと相手は気づかないよ。だから、よくやった」

 

ケントさんは、息子が停学になったことを叱るのではなく、逆に自分でイジメから身を守ったことをほめたのです。息子は父親の意外な対応に驚いた顔をしたものの、最後には笑ってくれたとケントさんは話します。

 

こういうときに子供の信頼が得られるのだと思います。そして親を信頼している子は強いですよ。親という応援団がついているのは、子どもにとって大きな自信になります。

 

子どものため、良かれと思ってしているしつけや教育が子どもの自信を奪っていたかもしれない……。『日本人に自信を取り戻す「ほめる力」』は、自信の無い日本人を生み出していた教育方法を見直す時が来ていることを、教えています。

 

文/藤沢緑彩

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日本人の自信を取り戻す「ほめる力」

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ケント・ギルバート/原邦雄

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