akane
2018/09/25
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2018/09/25
ADHDというと、学校の授業中にじっと座り続けていることができず、席を立って動き回ってしまう子どもに見られる症状を思い浮かべる方は多いと思います。
しかし、ADHDには不注意・多動性・衝動性の三つの特性があり、ADHDの人によく見られる行動は、すべてこのいずれか、あるいは複数の要素にまたがったものだそうです。
福岡在住の臨床心理士・中島美鈴さんの新刊『もしかして、私、大人のADHD?』(光文社新書)によると、ADHDの人によくみられる行動というのは、学校で授業中に席を立ってしまうだけではないのだそう。大人でも、会議やデスクワークで、じっとしていなければいけないときに、貧乏ゆすりや関係ない落書きをし続ける、頭の中で他のいろいろな考え事をしてしまう、こうしたことも、ADHDの特性からくるものだというのです。
たとえば、試験前で勉強しなくてはいけないのに、部屋の掃除が楽しくてサクサク進んでしまうということがあります。
このように、やらなくてはならないことがあるときに限って、別のことばかりしてしまう……というのは、やらなくてはならないことに集中し続けることが難しいという「不注意」と、目の前の興味のあることに飛びついてしまい、やらなければならないことを計画的に処理できないという「衝動性」の二つの特性がミックスしているのだそうです。
中島先生は、ADHDの診断を受けた人に人間関係の悩みを聞くと、必ずと言ってよいほど「私は空気が読めないのでしょうか?」と尋ねられるそうです。
しかし、ADHDの特性に「空気が読めない」というのは、含まれていないのだそうです。むしろ、空気や文脈は読める方だと言います。
ADHDの診断を受ける人の中には、他の障害を併存する例は多くみられ、「空気が読めない」特性を持つ自閉スペクトラム症(ASD)は併存率が高いのだそうです。
社会的認知や対人関係に障害のある自閉スペクトラム症の診断を受けている人は、「遊びにきて」という言葉を言葉どおりに受け取りがちです。誰が誰に言ったのか、その人と自分がどういう社会関係にあるかという認知が苦手なので、その部分をうまく考慮できず、自分がその人の家に遊びに行くほどの関係にあるかどうかを検討するという発想自体が思い浮かばないことが多いようです。
一方、ADHDの場合では、人付き合いでどうすべきなのかがわかっていても、自分の欲求や感情が抑えられず、対人関係を壊すような言動をしてしまうのだそうです。
ADHDの人が自閉スペクトラム症を併発した場合、人付き合いがうまくいっていないことが感覚的にはつかめるものの、なぜそうなってしまうのか理解するが難しく、仮に誰かにアドバイスをもらえたとしても、わかってはいるのに、そうすべきとされる振る舞いをすることができないという苦しい状況になってしまうようです。
併存症がない場合でも、ADHDの人の場合、人付き合いでどうすべきなのかがわかっていても、自分の欲求や感情が抑えられずに対人関係を壊すような言動をしてしまうこともあります。衝動性の特性の問題があるのです。
ADHDの人は、人見知りをせずに、非常に明るく社交的に振る舞えるのも特徴です。普通の人ならとても勇気がいることを言える大胆さが、良い結果を生む場合もあり、ビジネスシーンでは「チャンスを逃さないスピード感」と評価される人もいます。
しかし、残念なことに、まめに連絡を取り合うことや、安定した情緒を維持することは難しく、人間関係を継続させることは苦手なのだそうです。ADHDの人は、特性である衝動性を長期間にわたってコントロールするのは至難の業だからです。
わかっていても衝動的に相手にキレるなどの失敗を繰り返し、実際に人間関係の破綻が続くと、相手に見捨てられるかもしれないという不安を抱くようになったり、相手に見捨てられて傷つくのを恐れるあまり、常に人間関係に対して距離を置いて、本当の自分を見せないように振る舞おうとする人もいます。けれども、本心では誰かと強く結びついていたいと願っているために、いずれの場合であっても、とても葛藤の強い状況に陥っているのだそうです。
書籍の中で、中島先生はADHDの本人だけではなく、周囲にいる親や上司の立場の人がADHDの特性をどう受け止め、どのような工夫ができるかなど、支援者として学んだこともまとめています。
人はそれぞれ異なる知性や能力を持っています。だからこそ、いろいろな人と交わることで豊かな人間性を培うことができます。
ADHDの知識をもとに、その人の特性を知ることでどうしたらいいかがわかることは、実は周囲の人自身の人間力を豊かにし、高めることでもある、と中島先生は説いています。
この本は、ADHDという障害を専門的に説くだけではなく、ADHDの人にとっても、そうでない人にとっても「生きやすさ」につながるヒントを紹介しています。
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この記事は『もしかして、私、大人のADHD?』(光文社新書)より一部を抜粋、再構成してお届けしました。
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