akane
2020/12/28
akane
2020/12/28
原 人間は苦労や失敗をしないと学べないことは理解しつつ、なかなか自分の子どもに苦労をさせたくないという親心もあります。どこまでやらせればいいのでしょうか?
ケント 過保護はやはりダメですよ。見た目は成長していきますが、芯がないから自信も育たないでしょう。そうすると困難にあったら、すぐに挫けてしまいます。
そういう人間は倫理観も薄いから、問題を隠そうとして不祥事を起こしてしまうかもしれません。難しい人間関係では耐えられず、仕事はすぐに辞職したり、結婚しても早々と離婚したりして、あるいは、引きこもりになることもあるでしょう。だから子どもに成功するチャンスと同様に苦労するチャンスを与えるのは、親の最大の使命です。
原 私の個人的な経験では、そのような苦労をするチャンスは親からもらっていないですね。自分でいろいろと選択して、経験してきたような気がします。学生時代も空手部だったので、部活や社会に出てから理不尽な経験をいろいろしました。この理不尽のお陰でメンタルが強くなり、感謝しています。こういった、一見「理不尽」を経験している人のほうが、意志の力や乗り越える心が宿る場合もあります。
ケント 原さんの場合、子どものころから冒険心や好奇心があったと思います。そして、ご両親はそれを消さなかったのではないでしょうか?
原 たしかにそうです。私は「ほめ育」という「ほめて育てる教育」を広めていますが、自分自身が両親に日本一の「ほめ育」をされたと思っています。特に「好奇心」を育ててくれたと思います。
お陰で理不尽な経験から精神的に落ち込んだり、頭痛が止まらなかった時期でも、自分の未来は必ず明るいと信じることができたのかもしれません。
ケント それは、ちょうど20%ぐらいの苦労だったのかもしれませんね。あまりにも苦労や理不尽な経験が多いと、逆に自殺に追い込まれてしまうこともありますから避けるべきでしょう。
しかし、親からしっかりと自信を育ててもらっていれば、20 %ぐらいの逆境には耐えられますし、それを生きる原動力に変えることもできます。
原 私が幸運だったのは、いろいろな良い言葉に出会ったこともあると思います。論語の中に「徳は孤ならず、必ず隣となりあり」という私が大好きな言葉があります。本当に徳のある人は孤立したり、孤独であるということはない、理解し助力する人が必ず現れるという意味ですね。この言葉は私の心をずっと支えてくれました。
また、ある人にケントさんの本をすすめられて、自分の国の本当の歴史やそれが教えられてこなかった背景を知ることができて、とても自信や自己肯定感につながりました。
ケント おっしゃるとおり、知識を身につけることは自信につながります。ここで、かつて約2年間の布教活動で得た経験についてもう少しお話ししましょう。
私は1971年10月、日本に宣教師として派遣される前にハワイで2ヶ月間、日本語の集中講義を受けました。朝7時半から夜9時半までの特訓です。せっかくハワイにいるのに海に入ることも禁止され、ほとんど施設に閉じ込められていました。だから研修生の中には地獄だと言う人もいましたが、私にとっては人生でもっとも充実した2ヶ月間でした。
なぜなら、「日本語の会話集を暗記する」という明確な目標があったからです。そこでは洗濯ぐらいはしましたが、大学の食堂があったのでご飯を作る必要もありません。家族も彼女もいないし、電話もテレビも新聞もない環境でとにかくそれだけに集中していました。
その結果、2ヶ月で「日本語の会話集を暗記する」という目標を実現したとき、ものすごい達成感と自信が得られたのです。
原 まさに目標を達成する経験が自信になる、という実体験ですね。
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