コピーライターが伝授――「自分を知る」ことなしに「深く刺さる言葉」は生まれない|勝浦雅彦『つながるための言葉』
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BW_machida

2022/04/26

『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』
勝浦雅彦/著

 

「大牟田スイミンングスクール」のポスター

 

人はみな、生まれ落ちた瞬間からひとつひとつ言葉を手に入れていく。親からの愛情に満ちた言葉、友人からの敬意ある言葉、思いもよらぬ他人からの優しい言葉。毎日たくさんの言葉を投げかけられているはずなのに、冷たくて汚い言葉がこれほど心をえぐるのはなぜだろう。人は否応なしに、言葉によってつながり合う生き物である。そして言葉というのは研ぎすまされているほど、深く刺さるものなのだ。

 

コピーライターの世界では「いいコピーはココロを動かし、足を動かす」というらしい。人は言葉に揺さぶられ、そのうえで行動に移る。だから、むき出しの言葉を相手に放り投げる行為は大きな軋轢を生むことがある。良くも悪くも「あなたのひとことには、誰かの心に一生残り続けるほどの価値がある」というわけだ。

 

本書は「自分を言い表し、他者とつながる」ことを目的にした一冊である。しかし焦りは禁物だ。つながるための言葉をひとことで言い表わすためには、自分が何者なのかを知り、自分の意見を持ち、どんな思考の道筋を用いて考えるべきか、前もって準備しておくことが重要なのだという。「言葉とは、自分を知らずして発見できることも、深まることも」ないのだから。

 

SNSで発信力を高めたいとか、フォロワー数を増やしたいという声はよく聞く話。本書によれば、ツイッターは24時間営業の居酒屋みたいなものらしい。朝から晩まで、どの時間にのぞいても誰かが何かを発言して賑わっているためである。また、デジタルの海では毎日どこかで誰かが炎上騒ぎを起こしている。ルール無用の誹謗中傷は社会問題のひとつだ。負の面ばかりが目立ちやすいSNSだが、良い点もある。

 

自由度の高い言葉がメインのツイッターは、それゆえ多くの意見やコメントが集まりやすい。そのなかに時々「砂漠の砂の中にキラリと光る、ダイヤモンドのような誰かの言葉に出会う」ことがあるという。SNSは危険な刃にもなりうるが、人を救うクッションにもなりうる。

 

「言葉を知ってしまった我々はもうそれなしでは生きていけません。言葉から逃げ出したいと思う時がある。言葉を知るたびに自分の内に秘めていた心の奥底の感情が露わになって苦しむこともある。それでも勇気を持ってつながるための言葉を紡ぎましょう。」

 

「つながり合うことは、人間の本能」であると語る著者は、「その根底には他者への愛が必要である」と言葉をつづける。「つながるための言葉」は、他者と心をわかちあうための技術となって、あなたの人生を豊かにしてくれるかもしれない。

 

『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』
勝浦雅彦/著

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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