英国発、世界的ベストセラーの絵本! 子どもたちを夢中にさせる “双方向絵本”|トム・フレッチャー『ほんのなかのモンスター』
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ryomiyagi

2022/05/03

『ほんのなかのモンスター』
トム・フレッチャー/著 グレッグ・アボット/イラスト いがらしかなこ/翻訳

 

 

本のなかに入りこんだ一匹のモンスター。このモンスター、いたずら好きな様子で真っ白なページに大きな穴をあけたり、口のまわりを汚しながらページの端っこを食べたりしている。ピンク色のツノに、青いからだ。丸くて大きな頭にこぼれ落ちそうに大きな目。きちんと白と黒のボーダー服まで着ている。このモンスター、見た目だけでなく動きもなかなか可愛いのである。

 

本書の原版は『There’s a Monster in Your Book』。Who’s In Your Bookシリーズのひとつで、世界中で大ベストセラーとなった絵本の第1作目にあたる。作者のトム・フレッチャーはイギリスの児童文学作家であり、ミュージシャン。イラストを担当したグレッグ・アボットはグラフィックデザイナーだが、本のイラストだけでなく服やおもちゃなど幅広くデザインを手掛けている。テンポよく軽快に進んでいく物語と、一度目にしたら忘れられない印象的なキャラクター。世界中の子どもたちを夢中にさせた理由は、ほかにもある。

 

本に入ってしまったモンスターを「そとへ おいださなくちゃ。ほんを おおきく ふってみよう」絵本は読者にそう呼びかける。ページをめくると、本を振ったせいだろうか、モンスターが「ほうら しりもちを ついてる。」それでもまだ本から出ていく様子はなさそうだ。そこで今度は「あしを くすぐってみよう。こちょこちょこちょ」すると、モンスターは大笑い。「こんどは ふきとばしてみよう。」大きく息を吹きかけると、モンスターは遠くへ飛んで行ってしまう。

 

本書の魅力は、何と言ってもページをめくりながら本のなかと現実の世界を行ったり来たりできること。本を傾けたり、大声をだしたり、ゆすったり。その都度、モンスターが転がったり、飛ばされたり、耳を塞いだりと、せわしなくページのなかを動きまわる。

 

物語の終盤「こっちにおいで モンスターくーん!」と、読者の呼ぶ声に反応するようにしてページの隙間からひょっこり顔を出したモンスターの姿は、こちらの様子をうかがっているように見えて、おもしろかった。

 

『ほんのなかのモンスター』
トム・フレッチャー/著 グレッグ・アボット/イラスト いがらしかなこ/翻訳

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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