ryomiyagi
2020/07/03
ryomiyagi
2020/07/03
どうも、関取花です。この度、「関取花の一冊読んでく?」という連載を始めさせていただくことになりました。
初めましての方がほとんどかと思いますので、軽く自己紹介をさせていただきます。
1990年12月18日生まれ、寝ること食べること飲むことが大好きな29歳です。
ミュージシャンをやっております。
趣味というか好きなことは、本を読むこととラジオを聞くことです。音楽ももちろん大好きなのですが、自分自身が煮詰まっていたりすると、手放しで楽しめない時もあるのが本音です。
「このフレーズはここに活かせるな」とか「ここの歌詞の韻の踏み方は上手いな」とか、耳や心より先に、どうしても脳みそで聴いてしまいます。悪いことではないかもしれませんが、たぶんもっと大切なのは、そっと目を閉じて歌詞の世界に入り込むこと、メロディに合わせて心が踊り出すのを感じること。要するに、想像することなんだと思います。
余裕がなくてそれができない時、私は本を読みます。
本を読んでいると、頭の中で勝手に映像が浮かびあがります。行ったこともない宇宙や遥か遠くの国、過ぎ去った時代、誰かの生活の中に旅することができたのなら、もう大丈夫です。散歩に出かければ、見慣れた景色がほんの少し輝いて見えます。
一文字も書けていなかった歌詞が、スラスラとノートの上を歩き出します。
そして音楽を聴けば耳に溶け込んできて、心の中に染み渡ります。私はそうやって何度も本に救われてきました。
だから今回、本を紹介する連載をやってみないかとお声がけいただいた時は本当に嬉しかったです。大好きな本に関わるお仕事ができるなんて、とても光栄なことです。
でもだからこそ、決してひとりよがりなものにはしたくないと思いました。この連載を読んでくれた誰かが、「これは自分のための本かもしれない」と思えるようなものにしたい。
そう考えた時に、ラジオみたいな連載はどうだろう、とふと思いつきました。
先にも述べたとおり、私はラジオが好きで普段からよく聞きます。顔も見えない相手の話を聞いているだけなのに、なんだか同じ空間でおしゃべりしているような感覚になるのが不思議で心地良くて大好きです。
そんなことを公言し続けていたら、ありがたいことにラジオのお仕事も最近増えてきました。ゲスト出演も楽しいのですが、自分がパーソナリティの時は特にやりがいを感じます。
リスナーの皆さんから届くメールの中には、些細な質問からガッツリ人生相談まで様々なものがあります。それにどう答えようかその度に真剣に考えるのですが、上手く言葉にできない時が何度もありました。
そんな時私は頭の中で、「あの本を読んだら少しは気が楽になるんじゃないか」とよく思い浮かべていました。
この連載ではそんなふうに、読者の皆さんからの質問やお悩みに答える形で本を紹介できたらと思います。
「ちょっと花さん、聞いてよ」
「なるほどじゃあこれ、一冊本読んでく?」
というやりとりを通じて、ラジオのように距離を縮めて行けたら嬉しいです。
また、あまり普段本を読まないという方々にとって、本を身近に感じていただけるきっかけになったらいいなと思います。
そんなわけで、事前にツイッターの方で質問を募集させていただきました。呟いてくださった皆さんの質問の中から、今日は早速ひとつご紹介したいと思います。
#一冊読んでく?
〜ゼンキチさんからのご質問〜
仕事であっぷあっぷで精神的に疲れている際に、気分転換できる花さんオススメの本を教えてください!
ゼンキチさん、メッセージありがとうございます。お仕事毎日お疲れ様です。
特にここ数ヶ月は、世の中の動きやそれに伴う身の回りの環境の変化が色々とあって、みんな少なからずこりゃまいった状態に陥ったと思います。ゼンキチさんのお仕事もいつも以上に大忙しだったことでしょう。普段だったらそれこそお休みの日は遠出してみるとか、お友達と飲みに行くとか色々できましたけど、今はまだちょっといつも通りにははしゃげないですし、困ったもんですよね。
じゃあどうするかっていうと、私の場合はとにかく想像しまくります。それだけのために、この前フィジー島のガイドブックを買いました。行くお金も着られる水着もないですが、想像だから問題ありません。無料だし、想像の中ならナイスバディで真っ赤なビキニ着たって誰も何も言いませんから、最高です。ということで今日ご紹介するのはフィジー島のガイドブック…でも良いんですが、もっとオススメの本があるのでそれにします。
アンデルセンの『絵のない絵本』という本です。
『絵のない絵本』新潮社
アンデルセン/著
この本は、友達もいない貧しい絵描きにお月様が話しかけてくれることから始まります。そしてお月様は「さあ、わたしの話すことを、絵におかきなさい」「そうすれば、きっと、とてもきれいな絵本ができますよ」と絵描きに言います。でもタイトルの通り、この本に挿絵は一枚もありません。ただ絵描きがお月様から聞いた話をひとつひとつ並べただけです。
これだけ聞くと、なんで絵描きの絵を見せてくれないんだ!と思うかもしれませんが、なくていいんです。読んでいるうちに、頭の中に自然と絵が浮かんできます。つまり、これは私の解釈ですが、絵描きは読者の私たち自身だということです。お月様の話を聞いて、それぞれの絵をそれぞれの中に描けばいい。まずは想像してごらん、というメッセージのような気がしました(突然のジョンレノン感)。
私がこの本に出会ったのは学生の時で、本屋さんでタイトルに惹かれてなんとなく買いました。学生生活はすごく楽しかったのですが、毎日家に帰るたびに今よりよっぽどぐったりしていて……。
触れ合う人が多い分、気にすることも多くて、寝る前にあれこれ考えてしまう毎日でしたが、そんな時によくこの本を読んでいました。
寝る前に想像の旅をすると、リラックスできるんです。
お月様の話は世界中のいろんな場所に連れて行ってくれます。インド、中国、ローマ、時にはどこか知らない森や町……。
そして、その光景を想像しながら眠りにつくと、その日あった細かいことをちょっと忘れられるんです。頭と心が柔らかくなる感じがするんです。
ゼンキチさんもきっと、お仕事をしていると誰かしらと触れ合う機会があるはずです。それだけで案外心って疲れてしまいますよね。そしてきっとそれらに真剣に向き合っているからこそ、あっぷあっぷになるのだと思います。
だから、一人の時間は思いきり想像の旅に出てみてください。
真剣じゃなくていいんです。めんどくさかったら、その日は読まなくても全然良いと思います。さらりと旅に出かけてください。
「絵のない絵本」のひとつひとつの話は、3〜4ページほどで、ほんの数分あれば読めちゃいます。一杯お茶でも飲むかぐらいの感じで、気が向いたら本を開き、まぶたの裏に一枚の絵を描いてみてください。
眠る前でも、お仕事の合間でも。きっと良い気分転換になると思いますよ。
という感じで、この連載では引き続き皆さんからの質問、メッセージをお待ちしております。
#本がすき
#一冊読んでく
のハッシュタグをつけて、ツイッターでつぶやいてくださいね。
また、皆さんのオススメの本もバンバン教えてください。
この連載を通じて、自分も含めたくさんの方々が、一冊でも多くの素敵な本に出会えますように。次回からも、「関取花の一冊読んでく?」をよろしくお願いします!
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