『女の敵には向かない職業』著者新刊エッセイ 水生大海
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ryomiyagi

2022/11/04

a long time ago

 

初めて東京に行ったのは、夏コミだ。

 

と書きたいけど、ちょっと違う。初めての東京は中学校の修学旅行。でもその後ひとりで東京に行ったのは、コミックマーケット目当てだ。

 

たしか夜行電車を利用した。着いて、まずショック。朝食をとる店がないことに気づいた。喫茶店に行けばモーニングを食べられる東海地域の住人が、一度はかかる罠だ。今どきはファストフードカフェがあるけどね。

 

なのでこれは古いお話、晴海でコミケが開かれていた時代のこと。サークル参加をして現地集合の友人と長机について同人誌を販売し、交代で目当てのサークルに並んで同人誌やグッズを買う。描き手の方とお話をして、スケッチブックにイラストとサインをもらう。売り買いとともに交流を楽しんだっけ。だが会場からはバス移動とあり、帰りを急ぐ人は多いわ撤収時間は重なるわでなかなか乗れず、このままでは家に帰れなくなると途方に暮れた。いやそうなる前に、年上の友人が「一緒に泊まろう」と誘ってくれていたのだったか。いずれにせよ初めて会った方のアパートに泊めてもらった。

 

今思い返すと、若いって怖いもの知らずだ。でも友人も泊めてくれたお姉さんも親切で、ミンチで作った美味しい肉じゃがをいただき、感想戦に花を咲かせたのを覚えている。

 

なんて当時の思い出は、十月発売の『女の敵には向かない職業』にさほど入れられなかったので、ここに記してみた。
『女の敵には向かない職業』の主人公・彩華は漫画家の卵。勤めていた会社の倒産を機に、これが最後のチャンスとばかりに上京して、憧れの漫画家・香蓮のアシスタントとしてそのスタジオに入った。—はいいけれど、とんでもない「女の敵」がいてメンタルを削られる毎日。しかも盗難事件にファン(?)の襲撃とトラブルが続き、遂には……!

 

なにが起こったのか、ぜひ本書を読んでください。ちなみに女の敵は、表紙で堂々と顔を晒してます。

 

『女の敵には向かない職業』
水生大海/著

 

【あらすじ】
漫画家を目指し上京した彩華。しかし憧れの職場にいたのは、迷惑行為に無自覚な勘違い男。盗難騒ぎにストーカー、突き落とし……。次々起こる事件を、コイツに解決できるはずがない! 戦う女性に贈る爽快ミステリ!

 

みずき・ひろみ
2008年『少女たちの羅針盤』で第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作受賞。’09年に同作でデビュー。著書に「ランチ探偵」シリーズ、「社労士のヒナコ」シリーズなどがある。

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