健康に生きる秘訣はミトコンドリアにある
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2022/12/22

温活ブームとは真逆をいく書籍、『体を冷やせば健康になる』(光文社)が好評発売中です。著者であるナグモクリニック・南雲吉則先生は、自身のオンラインセミナーで、その種明かしについて語ってくれました。第2回目は、ミトコンドリアの特性と、体内で働く2つの燃焼モードについて教えていただきました。

 

写真/野口博

 

ミトコンドリアとは

 

わたしたちの細胞には、数多くのミトコンドリアが存在しています。前回お伝えしたように、深部体温を上げるためには、体を冷やすことこそ重要になってきます。寒冷刺激を与えられると、ミトコンドリアが酸素とともに脂肪を燃焼し、これによって深部体温が上昇します。そして、寒冷刺激が繰り返されると、ミトコンドリアはどんどん細胞分裂して、その数を増やしていくのです。

 

わたしたちの細胞の核には、両親から受け継いだ遺伝子DNAがありますが、ミトコンドリアの中には、わたしたちの遺伝子DNAとは全く異なる『ミトコンドリアDNA』があります。このように、両親からもらった遺伝子とミトコンドリア独自の遺伝子が違うということは、ミトコンドリアはわたしたちの体の細胞の中に共生している別の生物であり、互いに協力関係にあるといえます。

 

ミトコンドリアも、自分の子孫をどんどん増やしていきたいと思っています。ミトコンドリアが、なぜエネルギーをわたしたちに提供してくれるのかというと、体に棲まわせてもらっている対価としてだけではなく、自分の子孫を残したいからなのです。なので、ミトコンドリアは細胞分裂の盛んな組織には棲みたくありません。わたしたちがお風呂で体をゴシゴシ擦るたびに、皮膚の表面とともに細胞は剥がれ落ちていきますし、熱い味噌汁を飲んで口の中の粘膜が剥がれても、次の日にはもう治っているということはありますよね。皮膚や筋肉、消化管の粘膜といった組織は、それくらいとても新陳代謝が激しい場所なので、ミトコンドリアは棲みたがらないのです。

 

では、細胞分裂があまり行われない場所は、どこになるのでしょうか。ミトコンドリアは、脳や心臓、卵巣のような組織の細胞に数多く共生しています。そして『ミトコンドリアモード』によって、酸素とともに、糖や脂肪、タンパク質を燃焼して、たくさんのエネルギーを作り出しています。逆に、細胞分裂が盛んな場所では、酸素は使わず糖質だけを燃焼する『糖質モード』になっています。

 

ミトコンドリアとがんとの関係

 

正常細胞は、そこまで細胞分裂しませんが、がん細胞は正常細胞の何倍ものスピードでどんどん細胞分裂していきます。ですので、がん細胞にはミトコンドリアは棲みません。つまり、がん細胞は糖しか利用することができない糖質モードであるため、糖質を制限すると、がんの発育を抑えることができます。しかも、糖質を制限すれば、酸素と一緒に脂肪を燃焼するため、ミトコンドリアが増加します。つまり、ミトコンドリアには、がん細胞の分裂を抑制する働きがあるのです。

 

 運動のハイブリッド理論

 

多細胞生物である人間の体には、ミトコンドリアモードと糖質モードのどちらも必要で、状況に応じて使い分けられています。

 

糖質モードでは、糖しか燃焼できないため、生産できるエネルギーの量は小さく、エネルギー効率は悪いといえますが、瞬発力には優れています。一方ミトコンドリアモードでは、糖の他にも脂肪やタンパク質もエネルギーに変えることができるので、一度に多くのエネルギーを作り出すことができます。しかし回路が複雑なため、燃焼するまでに時間がかかります。

 

これをまず、電気とガソリンに例えて考えてみましょう。電気は、酸素がなくても動きます。月面でも海の中でも、ペダルを踏むと瞬発的に動かすことができます。ただし、重たいバッテリーを搭載する必要があるので、燃焼効率は悪いです。それに対してガソリンは、1gが10kcalなので燃焼効率がとても良く、しかも軽いので、たくさん蓄えることができます。しかし酸素がないと燃焼しませんし、動き出すまでに少し時間がかかります。

 

電気を糖に、そしてガソリンを脂肪に置き変えると、わたしたちの体も同じように説明ができます。筋肉中にはグリコーゲンという糖質があり、糖質モードによって酸素がなくても瞬発的に動くことができます。100m走をした後、しばらく起き上がれないのは、バッテリー切れをおこしているからです。それに対して脂肪はどうでしょうか。例えば、皆さんがディズニーランドへ行ったとき、開園時間から閉園時間まで歩き続けることができますよね。これは、ミトコンドリアモードが発動して、普段お腹周りに溜め込んでいた埋蔵金、すなわち脂肪を燃焼しているから動き続けられるのです。

 

この持久力に優れたミトコンドリアモードを自らの意思で稼働できるようになれば、わたしたちは疲れない健康的な体を手に入れることができるのです。

 

次回は、ミトコンドリアモードを発動させる4つのポイントについて解説いたします。

 

ライター/ryoco

 

『体を冷やせば健康になる』
南雲吉則/著

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