ryomiyagi
2021/12/14
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2021/12/14
2019年20年と(いや、まだまだ続くか)世界はCOVID-19に悩まされ続けた。急ぎワクチンが開発され、世界中で接種が急がれたが、にもかかわらずCOVID-19は変異を繰り返し、安息の日を約束してはくれないまま2021年が終わろうとしている。
中国・武漢で確認されて以来、あっという間に世界各地に広まった新型コロナウイルスは、およそ2億5000万人(12月4日現在の各国累計感染者数。日本国内は1,727,701人)もの人々を苦しめ、未だにその勢いを緩めようとはしていない。
発症には軽度・中度・重度と段階があり、中・軽度においてはインフルエンザのような症状だが、重度に移行し、そこになんらかの基礎疾患が重なると死に至る例も数多く見られる。しかし、そんな現在、一日の新規感染者数を100人程度に治めている日本では、そのあり得ない治まりように対する漠然とした不安と、第6波襲来に怯える日々が続いている。
還暦を過ごしたメタボ気味の私は、脳裏を過る不安と闘いながらもすでにワクチン接種を済ませてはいるが、それでもまだ、来るべき第6波と新たなる変異種の登場に少なからず怯えている。
『肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか』(光文社新書)の著者は、自らが糖質制限によりメタボを脱却し、その経験をもとに患者の食事療法に取り組み、様々に成果を上げている清水泰行医師。基礎疾患の有る無しが、感染者の生死を分けると言われる昨今、読み込まずにはいられない一冊だった。
新型コロナウイルスのパンデミックの裏には、じつは糖質過剰摂取が関係していると考えられる。それは、このウイルス感染で重症化するリスクが高いのが、肥満、糖尿病、高血圧など、糖質過剰症候群の人が非常に多いことからもわかる。
よくマスコミなどで「基礎疾患」のある人という言葉が使われるが、実際には「疾患」は、検査などを受けて診断されて初めて「疾患あり」となる。つまり、血圧を測定していなければ高血圧とは診断されないし、血糖値を測定していなければ糖尿病の診断は下されない。
だから、診断された基礎疾患がある場合はもちろんだが、診断されていなくても危険な病態になっている人はたくさん存在すると思われる。
言われなくてもわかっていたつもりだが、まったくその通りだ。
以前計ったとき(すでに10年は経っている)に、血糖値も血圧にも問題は無かった。残念なことに、すでにその頃からメタボで(現在以上に)、周囲からは血糖値を危ぶまれたが、その都度、問題無しというこの時の検査結果を、まるで金科玉条のように掲げてみせた。そして、なんらの節制をすることもなく現在に至る。
基礎疾患の内容を見ると、肥満、糖尿病、高血圧、腎障害、胃食道逆流症、認知症、睡眠障害、うつ病、変形性関節症、脂質異常症、冠動脈アテローム性動脈硬化症など、ほとんどが糖質過剰症候群である。
前述の通り、確かにこれらの疾患を診断されたことは無い。しかし、病名や何かにとんと無関心な私ですら、ここに列記された病名の中に、過剰な糖質接種が原因と考えられる病を幾つも見つけることができる。
とするならば、「要は糖質接摂取を抑えれば良いのだ」と考えてはみるのだが、この言われなくても分かっているはずのことがなかなかできない。それができれば、中年(老年?)太りだのというくだらない悩みが消えてくれるのだ。それにしても、今もってラーメン好きを隠そうともしない怠惰な食生活を戒めるには、さらなる危機感が必要だ。
細胞内のブドウ糖の大量供給は、感染の進行を通して、ウイルスタンパク質と人間のタンパク質の両方のグリコシル化を確実にするための理想的な環境を提供するのである。その結果、感染による重症度が増加してしまう可能性が高くなる。(中略)
ウイルスは非生物であり、そのため独自の代謝を持っていない。したがってウイルスは、遺伝子の複製、タンパク質の合成、組み立てなどのためのエネルギー需要が大幅に増加し、エネルギーであるアデノシン三リン酸(ATP)の供給を必要とする。(中略)
高血糖は、グリコシル化や、細胞内に入ったウイルスの複製に必要な核酸やATPを生成するための材料を豊富に与える環境を作っていることになる。
まだコロナウイルスでは確認できていないようだが、すでにインフルエンザでは、肥満症の人の方がインフルエンザウイルスの排出が長期化するという研究結果が出ている。さらに、呼気中のウイルス量も、肥満症の方が多いというから、より伝染力は強くなるらしい。おそらく、この辺りの仕組みは、コロナウイルスにおいても変わらないに違いない。
著者が言うように、脂肪細胞はウイルスの貯蔵庫となるようだ。
世界中で推進されているワクチン接種だが、そこでいわれるワクチン効果とは、新型コロナウイルスに対する免疫を付けるということに他ない。しかし本書によれば、この免疫反応そのものに、過剰な糖質接収は危険な役回りを演じるようだ。
高血糖になると、サイトカイン産成の抑制、白血球動員阻害、病原体認識の欠陥、好中球機能障害、マクロファージの機能不全、ナチュラルキラー細胞の機能不全、および抗体・補体エフェクターの阻害などが起きると考えられている。簡単にいえば、高血糖になるとあなたの免疫機能は役立たずになるのだ。
さらに、コロナウイルスに感染し重篤な状態に陥った患者の高血糖者の割合など、
「肥満で年齢が60歳を超える患者では、重症化が3・11倍、死亡が3・93倍にもなった。」
という、おそるべき分析結果まで出ている。それらの事例や、糖質の過剰摂取と疾患の関係を各疾患ごとに詳しく説明し、私のような「体質改善・保全」に無自覚な者にも噛んで含めるように糖質の摂取を抑えなければならないと諭してくれる。
本書『肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか』(光文社新書)は、従来の、ただ「ダメだ、やめろ」と言い募るだけではない、自らの体質を改善することにより食事療法にたどり着いた著者だからこそ話せる「病院食の不備」や「改善法」など、日常にも取り入れるべき本当のコロナ対策と対処法を伝授する一冊だった。
文/森健次
肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか
清水泰行/著
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