2019/01/30
大岩 ヴィレッジヴァンガードららぽーと立川立飛店店長・百合部部長
『女流作家とユキ』/KADOKAWA
なごり悠/著
今回ご紹介させていただきますのは、なごり悠先生の「女流作家とユキ」です。以前からTwitterで話題の作品でして、個人的にも単行本化を熱望しておりました。ありがとうございます!
まさしく大正ロマンな世界観。とあるモダンなカフェーで働くユキは、作家の東紅子(あずまべにこ)先生のファンであった。ある日彼女が働いているところに美しい女性客が訪れる。思わず見とれるユキだが、その客はなんと東紅子その人であった。
切れ長の目、まっすぐボブに切られた髪に大きなモチーフのイヤリングを付け、着物につばの広い帽子を被るその人は、どこか魔女のような雰囲気を持っている。
運命ともいえる出会いと同時に恋に落ちるユキ。しかし恋に落ちたのはユキだけなのだろうか?この作品ではモノローグはユキのパートしか書かれておらず、先生は読者から見ても、ミステリアスな女性として描かれている。
二人は対照的だ。ユキは、黒髪を耳元でお団子に結い、たれ目でうつむきがちで、先生に話しかけられると耳まで真っ赤になってしまうような女の子である。
美しい先生に憧れおしゃれをしようと決心したユキは、いつものお団子をほどいて髪を下ろし、赤いリボンをつけ思い切ってイメージチェンジ。先生はユキを可憐だ、可愛いと褒めるが、こうつづけた。「貴女の美に気づいてそれ目当てのお客が増えてしまいそうね そのせいで私の席がなくなったらどうしようかしら」と。何という殺し文句。家に帰り、鏡台にリボンを置いたユキのモノローグも印象的である。『これは先生の前だけ 誰も… 先生だけでいい』
ユキはそれからリボンをつけるのをやめ、もとのお団子に戻したのだった。そんな彼女のいじらしさったらない。
先生の一挙一動に翻弄されるユキと、彼女を優しく惑わせる先生。二人の関係は、キスさえしていないものの絶妙な距離感である。抱きしめたり、頬に触れたり、涙を優しくぬぐったり。なんだかもどかしさすら感じる二人の関係だが、これからどのように変化していくのだろうか。
もう本当に、続きが気になってしょうがないです!
作中に黒猫が出てきます。私は、そんな二人を眺める黒猫でなりたいと熱望するのでした。
―今月のつぶやき―
元旦に初日の出は拝めませんでしたが、黄身の味噌漬けをいただきました。
漬けて二日目の心地よい塩気と柔らかさが最高でした。
『女流作家とユキ』/KADOKAWA
なごり悠/著