「幸せに生きる」ために知っておきたい、服との付き合い方

馬場紀衣 文筆家・ライター

『されど“服”で人生は変わる』
講談社 著/齋藤薫

 

 

「ファッションってある意味とても饒舌で、特に異性に対しては目に見えないこともいろいろ語ってしまう。」と語るのは、美容ジャーナリストやエッセイストとして数々のメディアで活躍する齋藤薫さん。オシャレなコーディネートについて知りたいならファッション雑誌を開きさえすれば事足りる。でも、洋服は人生や生き方とつながっていると感じたことがある人は、ぜひ本書を手にとってもらいたい。
たかが服……と思いつつ、女性なら誰しもが着る服に振りまわされた経験があるだろうし、若い頃なんて特に、頭のなかはオシャレのことでいっぱいだ。そして「オシャレのことで頭がいっぱいの時ほど、じつは服の意味が見えていないもの」

 

らしい。

 

著者によれば、そもそも装いは、毎日違えばそれでいいというものではないという。毎日服を変えたところで「着まわし」の匂いがすれば「やりくりしている」イメージが強く出てしまうし、その日のスケジュールにふさわしい装いが求められることもある。

 

「そもそも、女のオシャレ疲れは毎日毎日、一応違う服を着ていかなきゃいけない義務感からくるのは間違いないが、キレイな自分が作れていれば、それもまったく苦にならない。ところが、キレイになれないと、オシャレが煩雑になり、だからもっと疲れてくるという悪循環、そこに一度ハマると、なかなか抜け出られない」

 

心の調子があまり良くないときほど、服選びに慎重になって欲しいと著者は語る。ひどく疲れているときは、触れるものすべてがトゲトゲしく感じられる。「人は人に優しくされると優しくなる」、それは触覚も同じだ。だから疲れているときには、優しくてやわらかい素材を選んでほしい。たとえば、肌にスルスルとろけるようなシルク。肌ざわりの良いやわらかな素材のブラウスは、心の向きを変えてくれるばかりか、女っぷりもあげてくれる。そうした、もしものときの一着を常備しておくと心の余裕が違ってくるという。

 

家で過ごすひとりの時間にも気を遣ってほしい。誰にも会わないからといって、外で着なくなった古いニットなんかを着てしまうと、体を休めることはできても、安らぎは得られない。「装いは、いちばん効く暗示」なのだ。家でリラックスするときの服も、外出着のようにきちんと選ぶこと。心を休めるため、自分に手間をかけ、大切に取り扱うようにすること。

 

本書は装いのその先の、人生を幸せに生きるために知っておきたい服との付き合い方を、実例を提示しながら紹介してくれている。外見だけでなく、内面から幸せに生きるためのアイデアを、服を通して紹介してくれる一冊だ。

 


『されど“服”で人生は変わる』
講談社 著/齋藤薫

この記事を書いた人

馬場紀衣

-baba-iori-

文筆家・ライター

東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。

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