ryomiyagi
2019/12/25
ryomiyagi
2019/12/25
アスリートとして成長していく小学生の結弦の体に合わせ、マッサージ中の会話の内容も、少しずつ変わっていきました。
あるとき僕がジャンプの話をしたときも、結弦は興味深そうな顔で聞いていました。
「なあ、結弦、ジャンプはな、跳ぶときに脚をバーンと伸ばさないといけないんだぞ」
高くジャンプするためには、足首だけで跳んでもだめなんです。
ハムストリングス(太ももの裏側)、股関節、お尻のまわりまで、足腰の筋肉をすべて使わないと高く跳べません。理想はジャンプしたときに、股関節とかかとを結ぶ線が一直線になること。ひざ、股関節、腰全体で体を持ち上げることが大事です。
もちろん、上半身の使い方、肩から指の先までの使い方によって、高さに大きな違いが出てしまいます。
そんな話をすると、結弦はじっと黙って聞いているわけですよ。
「普通の子どもは、跳んでみろ、と言うと、足首の力だけでジャンプしようとするんだ。でも、いいか、結弦、足首じゃないんだよ。地面からの反発力を効果的に使うためには、軸がぶれていたらダメだ。脚全体を伸ばせば軸がぶれない。そのためには、股関節の下に足首がないとダメだぞ」
実を言うと、これは陸上での跳躍の話で、氷上でのフィギュアのジャンプとはまったく違うものでした。
僕も、結弦に得意満面で話した後に、ひょっとしたら氷上とは違うんじゃないかと気づいたんですが、しばらく黙っていました。
彼のすごいところは、僕が話したことを自分なりに解釈して、「脚を伸ばして跳ぶということは、リンクではこうしたほうがいい」と、自分なりに吸収できることなのです。
小学生なのにすごいですよね。
結弦が東北高校に入学した頃に、こう言われたことがあります。
「小学生のときに、先生から教えてもらったジャンプは、陸上でのジャンプの理論ですよね?でも、あのとき先生が言ってくれた、脚を伸ばすイメージがわかった気がします」
結弦がいつもジャンプの際、心がけていたのは体の中心軸がぶれないことです。
実際、結弦のジャンプを見てもらえばわかります。頭のてっぺんが天井から糸でスーッと引っぱられるように浮き上がっていきますよね。軸がぶれていません。
このぶれはトップアスリートにかぎらず、誰にとってもさまざまな不調を招きます。
中心軸のぶれは、骨盤を支える筋肉や腰椎などの腰まわりにストレスがかかることで生じるのです。腰まわりの左右のバランスが悪くなると背骨に負担がかかります。
その結果、背骨を通る神経、血液やリンパ液などの流れが滞ってしまうのです。
【日常での実践メソッド】
体の中心軸を整えて不調を解消する「骨盤リセット・エクササイズ」
長時間のデスクワークをしたり腰が重いと感じたりしたときには、オフィスにあるようなキャスター(車輪)付のイスで、グルグル動きまわるだけでも、骨盤まわりの筋肉がほぐれ、体の中心軸が元に戻ります。
以上、『強く美しく鍛える30のメソッド』(光文社)から一部抜粋しました。
イラスト/株式会社ウエイド
菊地晃(きくち・あきら)
1956年宮城県生まれ。’90年、「寺岡接骨院きくち」を開業。さまざまな不調や怪我を抱える数多くのアスリートや患者を診てきた。接骨院での施術の傍ら、毎週日曜に体幹トレーニング教室を開催し、多くの小中学生を指導している。2020年東京パラリンピックに向け、パラアスリートのサポートも行う。
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